High Quality Video Networking

研究背景

 マルチビュービデオ(多視点映像)は,4K/8Kに次ぐ将来の映像技術の基礎技術として注目されています.マルチビュービデオは,ある被写体を異なる位置に設置した複数台のカメラから同時に撮影した映像をユーザに提供することで,臨場感あふれる映像サービスを実現する技術です(図1).マルチビュービデオ伝送は,娯楽(オリンピック放送),医療(ダビンチによる遠隔手術等),防犯(多角的な高度セキュリティ),探査(深海・宇宙資源探索等),交通(車載カメラによる自動運転等)分野への応用が期待されています.
 一方で,複数台のカメラ映像をユーザに伝送する必要があるため,伝送時におけるトラヒックの増大,データ損失による映像品質の劣化が生じます.また,これまでの映像技術とは異なり,マルチビュービデオにおいては,ユーザは複数台のカメラ映像のうち,視聴したいカメラを自由に切り替えながら映像を視聴することができます.このとき,ユーザが切り替え先のカメラ映像を途切れなく視聴できるように,ユーザに映像を送信する必要があります.
 本研究では,トラヒックの削減,データ損失による品質劣化の抑制,カメラ切り替え後のスムーズな再生を達成する伝送技術を,ネットワーク技術だけでなく,映像処理技術の観点を取り入れて分野横断的に研究開発を進めています.

マルチビュービデオ(多視点映像)

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研究内容

  1. 1.マルチビュービデオ伝送におけるトラヒック削減方式
     一般に,マルチビュービデオ伝送では,,撮影された全カメラ映像をユーザに対して伝送します.しかしながら,送信するカメラ台数が増えれば増えるほど,伝送時に要するトラヒックは劇的に増加します.
    本研究では,各ユーザのカメラ切替え頻度を元に,ユーザが視聴しうるカメラ映像領域を予測し,領域内に含まれる映像のみをユーザに伝送する方式を提案しています(図2).例えば,視聴者が頻繁に映像を切り替えている場合は,多くのカメラ映像を視聴者に送信し,あるカメラだけを視聴し続けている場合は,該当のカメラ映像を視聴者に送信します.本伝送方式によって,カメラ切り替え後のスムーズな映像再生を可能にするとともに,伝送時のトラヒックを削減できます.
  2. 2.データ損失による品質劣化を緩和するロス耐性方式

     現在,スマートフォンやタブレットに挙げられる無線端末上での映像視聴が急激に需要を伸ばしています.しかしながら,伝送に利用可能な無線資源の品質は,利用する時間・周波数に応じて大きく変化します.このばらつきは伝送中のデータ損失を引き起こすため,受信映像品質の劣化や,再生停止の頻発を招きます.
     本研究では,これらの無線端末上で高品質かつスムーズなマルチビュービデオ再生を実現する伝送方式を提案しています.本方式では,利用可能な無線資源の中で品質の高い資源に対して,重要な映像データ(損失した場合,品質の急落や再生停止を招くデータ)を適応的に割り当てること(図3)で,損失による品質劣化を緩和するとともに,無線端末上でのスムーズな映像再生を実現します.

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