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「企業の挑戦と大学への期待」(富士通研究所 持田 侑宏 氏)
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(講演要旨)
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データ通信トラフィックはムーアの法則を上回る勢いで伸張している。この処理には、Mooreの法則に従う電気的処理技術では限界があり、光技術の適用が期待される。光伝送処理技術の能力は、WDM技術により年4倍というGilderの法則に従って伸びている。
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現状のデータ通信ネットワーク(インターネット)では、データは個々に形成されたネットワーク間をルータによりホッピングして伝達されるため、ホップ数の増加により、遅延、スループットの低下が顕著となる。次世代のネットワークでは、ネットワーク全体がバーチャルなルータに見えるような構造とする必要があるが、そのためには種々のレベルでのカットスルー技術が重要。フォトニック技術は波長を利用する事により、波長レベルでのカットスルーや需要に応じたリソース割り当て、透明性を実現できる。
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光伝送では数Tbpsのスループットの装置が既に商用化されている。これをさらにトラフィック需要に応じて拡大しようとすると、消費電力、装置サイズが大きな制限要因となる。実現技術としては、新波長帯域開拓によるWDMチャネル数の拡大(1000波)、高速化(40→160Gbps)、光レベルでのADM、クロスコネククト等が開発されてきており、10Tbpsスループットの実現性は見えてきている。
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これまで、一つの技術が飽和して踊り場を迎えると、別の技術が立ち上がって進歩が継続されるという「Sカーブ」理論が言われている(BTのPeter Cochrane)。しかし、2010年以降には、Mooreの法則による大きな壁(Moore's Wall)に到達すると予測される。この打破の為に大学に今から基礎的な検討をお願いしたい。フォトニック技術特に全光処理技術、量子通信技術等の可能性の明確化を期待したい。
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大学も含め「研究はビジネスである」と考えるべきではないか(激しい変化、グローバルな競争、ビジネスモデルの必要性、アーキテクト(トータルにまとめる力)の必要性、プロジェクト方式、顧客を考えた取り組みが必要 等の点で)。
(質疑、コメント)
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小澤(名大)
量子力学の歴史を見ると、ドイツで高温の炉の制御、測定という工業的な目的が最初にあった。当時の教養主義的な大学では対応できなかった為、Siemensの寄付で国研が設立されて研究が始まりWienの法則が導かれた。Wienの法則は実用域では十分な法則であり、ビジネスという意味では十分だったが、そこで研究を止めず極限状況を突き詰めた末に量子の概念が生まれた。こういう「真理の探究」という面も研究では重要と考える。
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小関委員長
そういう真理の探究という領域さえもビジネスになるというのが最近の動き。
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植松(東工大)
量子コンピューティングも含め、次世代のコンピューティングのパラダイムがどれもまだ立ち上がりの速度が遅い。2010年に壁がくるなら、現状の延長で考えないととても間に合わ内のではないか。量子通信で言えば、まだpoint-to-pointの世界であり、ネットワーク化には、これからマルチアクセス技術を立ち上げて行く必要がある。
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持田(富士通研)
(研究はビジネスということに関して)独国研では、一部の企業との排他的な共同研究をやっていたり、トップがビジネスを積極的に探すなど、ビジネスをやっている。こういう面も重要。
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古屋(東工大)
既に工業的なレベルの1/10から1/20の大きさの電子デバイスが研究的には実現できている。電子の波としての性質を利用できるこのようなデバイスをどう使うかを考えていく必要があり、量子コンピューティングはよい応用になり得ると思える。こういうアプローチもビジネスといえるのではないか。
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「フォトニックネットワークの研究開発の進め方について」(東京大学 青山 友紀 教授)
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(講演要旨)
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電話網とインターネットトラヒックは、それぞれ長期的設備投資とon demandな設備投資を必要とする計画経済と市場経済に例えられる。インターネットトラヒックには大きく分けて、TCPトラヒック(Webコンテンツ)、放送配信やディジタルシネマのようなストリーム情報、Napstar、GnutellaなどのPeer to Peerの大容量ファイル転送の3種類がある。
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放送業界(民放)のインターネットビジネスへの対応については、B to CはやらずにB to Bをやる模様。放送番組のインターネット配信のビジネスモデル自体、まだ確立していないが、大きなマーケットなので手をこまねいているわけにはいかないという認識。
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ディジタルシネマの動向としては、ジョージ・ルーカスが1080Pというハイビジョン仕様のものを使っている。ただ、1080Pでは不足で、2000本クラスの2048Pを検討するディジタルシネマコンソーシアムが設立された。
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日本のこれまでの技術開発戦略を考えると、70年代〜80年代は電子立国で成功を収め、その後90年代は米国の一人勝ちだったが、2000年〜2010年は巻き返しを図ってIT立国を目指している。現在の日本の技術を分析すると部品分野ではメモリ、光デバイス、液晶が強く、プロセッサが弱い。ソフト分野ではOSが弱い。一方、物理層では移動・光通信システムが強い。ネットワーク層では、交換機、ルータが弱い。アプリでは、ゲーム・アニメが強く、映画には弱いという特徴がある。
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IT立国に向けたIT戦略会議の目標として、2005年に高速アクセス(〜数Mbit/s)を3000万世帯に、超高速アクセス(30 Mbit/s〜100Mbit/s)を1000万世帯に供給することが掲げられている。光通信技術の役割としては、第1期は電話網のディジタル化に貢献したポイントツーポイントの光パルス伝送、第2期はインターネットの拡大に貢献する波長と光領域情報処理とが考えられる。
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研究開発方式は、時間で短(2年)、中(5年)、長期(10年)の3タイプ(年数はプロトタイプの開発時)に、機関でキャリア単独、ベンダ単独、キャリア+ベンダ、大学+国、大学+企業、大学+企業+国などのタイプに分類される。研究開発の連携モデルとしては、インターネット方式(大学+国の助成+(企業))、第5世代コンピュータ方式(組織+メーカ+国研+国の助成)、通産共同研究方式(キャリア(人+金)+メーカ(人))、大連携方式(大学+キャリア+メーカ+国の助成+(国研))などがある。今後、デバイス、光システム、インターネットの各分野が連携して超DWDMリンク、フォトニックルータ、IP・フォトニック統合OAM、フォトニックアクセスネットワークなどの開発を行っていく必要がある。
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フォトニックネットワークで波長がいくら必要かという問いに対しては、静的、動的、波長変換、対地の粒度、スケーラビリティといういろいろな観点があるが、大まかに2005年に1000波長程度、2010年には3000波長程度が必要になると考えられる。ネットワークスループットでは、2010年に100 Tbit/s〜1 Pbit/s、エントリー数ではkbit/s〜数十kbit/sが予想される。
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日本にも研究開発用のNWのテストベッドが必要で、海外では米国やカナダでOptical STAR TAPやCA*net4、STARLIGHTなどがある。テストベッドを拠点に共同研究施設を整備し、そこをデバイス、光ネットワーク、インターネット、アプリケーションの交流の場として研究を加速する必要がある。
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最近、日本におけるフォトニックネットワークに関する政策提言、技術調査、情報交流(国際シンポ開催)を促進することを目的にして、2月28日に「超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会」が60社の賛同を得て発足した。
(質疑、コメント)
(Q) |
フォトニックネットワークの使い方はどのようなものか?
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(A) |
アプリとネットワークは分けて考える必要があり、両者とも連携して研究を加速する。
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(C) |
フォトニックネットワークの研究開発にスーパーコンピュータ屋を入れてはどうか?
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(A) |
言い忘れたが、その分野の国際会議(グローバルグリッド:アムステルダム)にも参加して、スーパーコンピュータ分野の研究者とも交流を図ろうとしている。
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(C) |
計算機と高速ネットワークを結ぶ研究は電総研でも行っている。
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(Q) |
FTTHは誰が推進するのか?
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(Q) |
国は環境を整備する。
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(C) |
NTTとしては、別会社を作って規制のない自由な環境で高速アクセスサービスを推進する。
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(3) |
タスクフォース状況報告 「究極の光伝送路(ファイバ)」(東京大学 菊地 和朗 教授)
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(講演要旨)
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伝送路と信号処理用としての2つの方向がある。伝送路としては、GVD=0、分散スロープ=0、非線形性=0(ハイブリッド構成)が、信号処理用には、GVD任意、分散スロープ=0、非線形性大(高非線形ファイバ)などが必要となるであろう。
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最近、フォトニッククリスタルファイバがバース大、ルーセント、サザンプトン大などで精力的に研究され注目されている。これは、零分散波長を800 nm付近の短波長にシフトしたり、コアを中空にすることにより非線形性を抑えることができる。また、信号処理用としてスーパーコンティニウム発生など高機能ファイバとして用いることができる。
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今後、設計法の確立、機能の追及、製造技術の確立が必要。
(質疑、コメント)
(C) |
フォトニッククリスタルファイバは技術的に近いところにある。今後、計算に基づいて開発する必要がある。
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(4) |
運営内規 (井筒 雅之 委員(CRL))
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井筒委員から運営内規(案)を説明。「設置目的」を新たに入れることが同意された。内規(案)についてのコメントは10日以内にメールで小関委員長まで。
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学術創生研究
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提出済み(その後、落選の通知を受けた。来年に向けて、TFで検討して戴く方針(小関))
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自由討議&懇談会
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