最近、インターネットユーザの増加に伴い、利用者数の多い時間帯になると1つの電話番号に対して呼が集中する。またインターネットでは、画像や音声も 扱うことから、保留時間の変動が大きくなる。このように、従来のものとは異なる性質を持ったトラヒックが生成されている。そこで本研究では、実測デー タを用いたトラヒック状況の推定手法を提案する。対象としているのは小規模回線群であるため、少ないデータからの時間依存呼損率の推定を行なう。
今回使用したモデルは、Mt /G /s / 0 であるが、このモデルにおける厳密な呼損率を導くことは困難である。そこで本研究では修正負荷近似(Modified Offered Load Approximation, MOL近似)と呼ばれる手法を用いた。この手法を使用するには、発呼率、保留時間の分布が必要である。実測データは時間変 動の大きなものであるので、発呼率は区分的に線形であり、保留時間は区分内では同一の分布に従うと仮定した。これにより、時間依存呼損率の計算式を導 出した。
また、この推定結果を評価するために、実測データを用いたシミュレーションを行なった。しかし、データ数の少なさが原因で非常に特異な結果が生成され る可能性が高いため、可能な限り一般性を持った結果を出力するためのシミュレーション手法を検討した。具体的には、発呼時刻と保留時間の2つ組のうち、 保留時間を時間区分内で入れ換え、擬似的データを生成することで達成した。またそれらの結果の比較を行なったところ、発呼率のピーク時における保留時 間の変動係数が、十分に小さな値を持っていれば、解析結果は安全側を満たし、呼損率推定が可能であることがわかった。