近年,多種多様な情報をリアルタイムで通信するマルチメディア通信サービスへの期待が高まってきている.これらのサービスをユーザが快適に享受するためには,ネットワークが複数のサービス品質(QoS:Quality of Service)を保証することが重要となる.このため,サービス情報の検索においても,QoS保証を考慮した検索が必要となる.
そこで,本稿では,まず,ネットワーク全体の情報を把握するデータベースとして提案されているネットワークマップにサービス情報の管理機能を追加する.本方式では,広域ネットワークに対応させるため,木構造を用いた論理的な階層管理を行う.ここで,上位層に設置されたネットワークマップの保持する情報を簡易化することにより,階層管理を利用する際に問題となる,上位層におけるデータベース更新頻度を軽減する.
次に,前述のように拡張されたネットワークマップを利用し,QoS保証を考慮したサービス情報検索方式を提案する.ここで,例えば遅延等のように経路状況に依存するQoSについては,物理的なノード位置が近いノード間の経路ほどユーザの要求を満たしやすいことが予想されることに注意する.しかしながら,単純な木構造に沿った検索方式では,これらのノードが論理的に数ホップ離れたノードと前述の性質を考慮し,物理的なノード間距離の近いノードを優先した検索を行う.この時,検索先のノードとユーザの要求が生じたノードとの間に,要求されたQoSを満たす経路が存在しなければ,このノードの検索は行わない.これにより,検索効率の向上を図る.
最後に,単純に2分木に沿った検索方式及び木構造を用いずに物理的なノード間距離の近いノードから順に検索する方式と比較して,本方式はサービス情報検索に要する時間を短縮できることをシミュレーションによって確認した.