渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2000年度 卒業研究論文

複数QoSを考慮したマルチキャストルーチング方式に関する研究
神原 正義

近年,様々な情報をリアルタイムで通信するマルチメディア通信サービスが普及しつつある.中でもマルチキャスト通信を利用したサービスが 注目されている.従来のマルチキャストルーチングは主に単一の指標を最適化することを目的としているが,次世代のマルチメディア通信 サービスにおいては,帯域や遅延など様々なQoS (Quality of Service)要求を満たす必要があるため,複数のQoS要求を同時に満たす マルチキャストルーチングが求められる.

これは全ての目的ノードについての経路を,複数のQoSを考慮した1対1ルーチングにより生成することで 実現できる.しかし1対1ルーチングを並列に適用し, 得られた経路をそのまま用いる並列方式は各経路間のリンクの共有などを 考慮していないため,コストが大きくなる点が問題となる.ここでコストとはネットワーク資源の 有効利用を図るための指標である.一方リンクの共有を考慮し,逐次的に1対1ルーチングを行う直列方式は,目的ノード数に比例して処理時間が増大するという 問題点がある.そこで本研究ではこれらの問題点を解決するマルチキャストルーチング方式を提案する.

本方式では,まず全ての目的ノードに 対して複数のQoSを考慮した1対1ルーチングアルゴリズム Fallback+により経路を生成する.Fallback+は 目的経路を生成する過程で得られる暫定経路を保持するため,より多くの経路を得られる点が特徴である.次に,ここで得られた 全ての経路を候補経路とし,これらを効率的に組み合わせることによりコストを抑える.

また提案方式,並列方式および直列方式の時間計算量を導出し,さらにシミュレーションによって各方式のコストおよび提案方式によるコスト最適値を求め,提案方式が 並列方式と同等の時間計算量の処理で効果的にコストを削減できることを確認した.

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