渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2000年度 卒業研究論文

エージェント間通信における高信頼性ルーチング方式に関する研究
徳丸 裕章

近年,ネットワークの巨大化に伴い,ネットワーク上で公開される情報やサービスが急激に増加している.このような大規模ネットワークをユーザが効率よく利用するための技術として, モバイルエージェントが注目されている.

筆者が所属する研究室でも,Agent Gateway と呼ばれるマルチエージェントシステムを提案している. Agent Gateway では,複数のエージェントが互いに協力して1つの仕事を遂行するため,効率よく仕事を行うにはエージェント間の通信が不可欠となる. Agent Gateway におけるエージェント間通信には,位置透過性を実現するためエージェントの移動した経路が用いられる. そのため,その経路上のノードに障害が発生すると,エージェント間の通信が不可能となり,処理効率が著しく低下する.

この問題を解決するためには,障害が発生したノードを迂回する経路を新たに設定することが必要である.これには,マルチキャストツリーにおけるセルフヒーリングを適用する方法等が考えられるが, この方法ではメッセージがフラッディングによって送信されるため,障害復旧に関係の無いノードにまで無駄なメッセージが送られるという欠点がある.

そこで,このようなメッセージ送信を削減できる高信頼性ルーチング方式を提案する.この方式は,Agent Gateway 上でのエージェントの移動経路が木構造になることに着目し,各ノードが保持する親子関係についての情報を利用することで,障害の発生によって孤立した部分木に属するノードを識別するものである. これにより,目的とする迂回経路の設定に関係のないノードへはメッセージ送信を行わない.

最後に,シミュレーションによる性能評価により,本方式と既存のマルチキャストツリーにおけるセルフヒーリングを適用した方式と比較して, 障害復旧に要する総メッセージ数の大幅な削減と復旧速度の高速化を確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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