2003年度 卒業研究論文

近年，大規模化の進むネットワークをユーザが効率良く利用するための技術として， モバイルエージェントが注目されている．また，その中で，エージェントが同 一環境内に複数存在するシステムをマルチエージェントシステムと 呼ぶ．

ここで，時間制約のある情報検索などでは， 制限時間内に可能な限り多くのノードで処理を完了することが重要であるが， 各エージェントはノードの状況や制限時間に関わらず移動して処理を 開始するため，制限時間内に処理を完了できないエージェントへのCPU資源の割り当てが， 他のエージェントにも影響を与えるという問題がある．

そこで，制限時間内に処理を完了できないようなエージェントの移動及び実行を抑える制御方式を提案する． まず，エージェントが移動する際に，クローンエージェントの生成に要する処理時間が経過する．この影響を考慮した上で， そのエージェントが移動することにより，移動元を含めた$N$ホップ先までのノードの 予測処理完了エージェント数の和が増加する場合のみ移動する． さらに，クローンエージェントの生成時間はノード内の他のエージェントにも影響を 与え，それらの処理完了までに要する時間が大きくなる．そのため，クローンエージェント生成後の エージェントが処理を開始することで，ノード内の予測処理完了エージェント数が増加する場合のみ処理を開始する． これにより，処理完了ノード数を増加させることができる．

最後に，シミュレーションによる性能評価により，既存の移動制御方式と比較して， 本提案方式が処理完了ノード数を増加できることを確認した． また，Nが2の場合が有効であることを確認した．