2005年度 卒業研究論文

近年，携帯通信端末の普及が急速に進み，いつでもどこでもネットワークに接続できるユビキタスネットワークへの期待が高まっている．ユビキタスネットワークでは様々な通信形態が要求されるため，端末同士の自律的な通信が必要となる．そこで，各端末がメッセージの中継機能を持ち，端末同士が自律的に経路を形成することが可能なアドホックネットワークが注目されている．アドホックネットワークではノードの移動や参加・離脱により，トポロジが変化するため，経路の頻繁な変更が必要となるためアドホックネットワーク用のプロトコルがいくつか考案されている．

そのなかでもAODVというプロトコルは不安定なネットワークでも有効であり，経路探索の効率がよく，様々なネットワークに適用可能であるため注目されている．AODVでは制御メッセージをネットワーク全体にフラッディングさせることで宛先への経路探索を行う．しかし，通信要求の発生毎に経路探索のために制御メッセージがフラッディングされるためメッセージ量が増加し，輻輳や電波干渉などが問題となる．

そこで，本論文ではこのような問題を解決するために，ユニキャストによる経路探索の方法を提案する．本方式では，AODVではあまり有効に活用されていない古い経路情報を有効に活用することでユニキャストによる経路探索を実現する．これにより，制御メッセージ量を大幅に削減することが可能となる．

本論文では，シミュレーションによる性能評価により，本方式が効率的な経路探索を実現できることを明らかにする．