近年,情報通信技術が急速に発展するのに伴い,大規模かつ複雑になりつつなる ネットワーク上での作業を効率よく遂行できる技術として,モバイルエージェント が注目されている.その中で,複数のエージェントが並列的に稼動するシステム をマルチエージェントシステムと呼ぶ.
マルチエージェントシステムでは,ノード内で複数のエージェントが活動する場 合,一般にノードのCPU 資源は全エージェント間で共有されるため,ノード内の エージェント数が増加すると,それぞれの処理完了までに要する時間が大きくなる.
情報検索などのような時間制約のあるアプリケーションでは,制限時間内に可能 な限り多くのノードで処理を完了することが重要である.本研究室では, 時間制約を考慮した上で,エージェントの移動と実行に伴う処理完了エージェン ト数の増減を予測し,効率的な制御を実現する方式を提案している.しかし, その移動実行制御方式は,各エージェントのワークデマンドが均質な場合しか考 慮していない.
そこで本稿では,時間制約下でかつワークデマンドが不均質な環境におけるエー ジェント制御方式を提案する.複数のエージェントが同じノードに存在する際, 注目するエージェントが他のエージェントから影響を受けることにより,処理完 了に要する時間が長くなり,処理完了確率も変化する.各エージェントの ワークデマンドが不均質な場合,それらのエージェントからの影響による処理完 了確率の変化も異なる.提案方式ではこのような影響をワークデマンド別に 考慮して各エージェントの処理完了確率を導出し,予測処理完了エージェント数 が増加する場合のみエージェントの移動と実行を開始する. これにより,異なるワークデマンドのエージェント間にも公平性を保持し,全体 の処理完了ノード数を増加することができる.
最後に,シミュレーションによる性能評価により,既存の移動制御方式と比較 し,提案方式の有効性を確認した.