2005年度 卒業研究論文

近年，ブロードバンドネットワークの発展により， リアルタイム性を持ったストリーム型アプリケーションのトラヒックが急増している． その1つとして，ビデオ会議のような多対多リアルタイム通信が注目を浴びている． 多対多リアルタイム通信では１人のユーザが発信した情報を， 他のユーザ全員に送信する必要があり，マルチキャスト通信が用いられる． マルチキャスト通信に起因する多対多リアルタイム通信における現状の問題点として， マルチキャストを行う際のネットワークの輻輳状況や多対多リアルタイム通信に 参加しているメンバの位置などによって， 各メンバが観測するEnd-to-Endのパケット伝搬遅延やパケットロス率に差が 生じることが挙げられる． したがって，本研究では多対多リアルタイム通信におけるメンバ間の 時間的，品質的公平性の提供を目的とする．

上述の問題点を解決するため， 本研究では共有木型アプリケーションレベルマルチキャストを想定し， 共有木の根となるコアにアプリケーションレベルの制御機構を付加する． この制御機構はスケジューリング規律と廃棄規律から成る． スケジューリング規律では， End-to-Endのパケット伝搬遅延を公平化するために， パケットの発生時刻，コアから宛先メンバまでの伝搬遅延を考慮して 送信キュー内のパケットをソーティングする． また，廃棄規律では，パケットロス率を公平化するために， パケットがコアに到着するまで通過するネットワーク上のパケットロス率を考慮して 廃棄確率を決定する．

最後に，本提案方式を計算機シミュレーションにより評価した． その結果，メンバ間のEnd-to-End伝搬遅延とパケットロス率の公平化を確認した．