渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2007年度 卒業研究論文

マルチサーバ配信における経路相関度を考慮した高信頼データ転送方式
藤本 章宏

近年のインターネットにおける高速通信サービスの普及により,今後インターネットを 介した動画配信サービスに対する需要が増加することが予想される.

これに伴い,IP 網上に分散されたキャッシュサーバを介してコンテンツ配信を行うContent Distribution Network (CDN) と呼ばれる技術が注目されている.CDNのような複数のサーバ を介し,複数のストリーミング配信が並行的に行われている環境における公平なQoS 制御 を目指した転送方式として,Inter-Stream FEC 方式が提案されている.Inter-Stream FEC 方 式とは,通常のストリームに加え,パリティストリームと呼ばれる冗長ストリームを同時 に受信することで,データの復元を可能とする方式である.パリティストリームは,受信 率の低いストリームを中心に編成された,XOR グループと呼ばれるストリームの集合から 生成される.Inter-Stream FEC 方式では,XOR グループに含まれる複数のストリームで同 時にロスが生じない限り,データを復元することができる.したがって,XOR グループの 編成制御が重要な処理となる.

複数のストリームで同時にパケットロスが起こる状況としては,その配信経路が共有し ているリンク上での輻輳が考えられる.このような場合,Inter-Stream FEC による復元が失 敗する可能性が高くなる.以上のことから,本研究では配信経路の共有リンクを考慮した XOR グループの編成法を提案する.具体的には,経路の共有リンク数を正規化した値とし て経路の“相関度” を定義し,この値がなるべく小さくなるようにストリームを組み合わせ てXOR グループを編成する.XOR グループ内の各ストリームの配信経路が共有するリン ク数を少なくすることで,複数のストリームで同時にパケットロスが起こる確率を減少さ せることができ,復元確率の増加が期待できる. 計算機シミュレーションを用いて本提案を従来のInter-Stream FEC 方式とパケットロス 率について比較することにより,本提案システムの有効性を評価する.

本講座では、情報システムの基盤となる情報の処理技法に関して、並列・分散処理技術を基本とする高機能情報処理システムと、 その知的ネットワーキング手法の開発を主要テーマとしている。特に、コンピュータ間通信の超高速化技術、属性の多様なトラフィックの統合的ネットワーク処理技術、 広域分散に伴う効率の良い資源共有方法を中心に、システム構成法とその実現技術に関するハードウェアおよびソフトウェアの研究を行っている。

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