2007年度 卒業研究論文

光の高速性・広帯域性を活用した光WDMネットワークにおけるスイッチング方式として光パケット交換網の研究が進められている．光パケット交換では，パケット単位でヘッダ情報に基づくスイッチングを行うため柔軟なネットワーク制御が可能となり，帯域を有効活用することができる．

一方，パケット交換を光レベルで行う場合，パケットの衝突回避が問題となる．現在の電子的なパケット交換網では，衝突回避としてRAMによるバッファリングを行うが，光レベルでのバッファリングを行う光RAMは現在のところ実現していない．光RAMに頼らない衝突回避方法として波長変換器を用いる方法が有望視されているが，波長変換器は高価格，高コストであることから，ノードが保有できる波長変換器数には制限がある．また，経済性の観点から光パケット交換網のノードと末端のネットワーク間のリンクで使用可能な波長数に制約がある可能性が高い．つまり光パケット交換網内で使用可能な波長数よりも，イーグレスノードからパケットが分岐する際に使用可能な波長数のほうが少ない ことが考えられる． そのため，イーグレスノードにおいて，分岐不可能な波長から分岐可能な波長への波長変換が頻繁に発生し，波長変換器不足によるパケットロス率が増大する．

以上の背景の下，本研究では，イーグレスノードの1ホップ手前のノードで計画的に波長変換を行うことによる，イーグレスノードでの波長変換抑制法を提案する．提案方式では， イーグレスノードは分岐可能波長の中から使用を推奨する波長を各隣接ノードに定期的に通知し，隣接ノードでは， 状況に応じ，通知された推奨波長へ事前波長変換を行う．これによりイーグレスノードでの波長変換を抑制しパケットロス率の軽減を図る．計算機シミュレーションを用いて評価を行い，提案方式の有効性を示す．