近年,分散配置された複数のコンポーネントを利用してサーバがアプリケーションを提供する分散Web サービスへの注目が高まっている. 分散Web サービスでは一つのコンポーネントが複数のサーバによって共用されているため,コンポーネント障害への対策が重要な問題となる. 本研究室では,コンポーネント間に張られたオーバレイネットワークを利用して単一コンポーネント障害の際に代替となるコンポーネントを探索する手法を既に確立した. しかしこの手法を用いた場合,コンポーネントを保持するノードに障害が発生し, 当該ノードの格納する全コンポーネントが使用不能になった際に代替となるコンポーネントが特定ノード上に集中してしまう可能性がある. 特定のノードに代替コンポーネントが集中するのは,更なるノード障害への耐性およびコンポーネントの性能低下という点から言って望ましくない.
そこで本論文では,複数のコンポーネントによる代替コンポーネント決定の際にそれが特定のノード上に集中することが少なくなるようなオーバレイネットワークの構築手法を提案する. 本手法では既存の構築手法に新たなパラメータである「切断優先度」を導入し,それを用いてオーバレイネットワークの切断を行うことにより代替コンポーネントの候補となるコンポーネントの分散を図る. 本論文では,シミュレーションによる性能評価により,提案手法によって代替コンポーネントが特定のノード上に集中するのを回避できることを明らかにする.