渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2007年度 卒業研究論文

IPネットワークにおける
TCPストリーミングに適したQoS制御機構
吉原直利

近年のネットワークのブロードバンド化に伴い,最近では.特にYouTube やGyaO に代 表されるTCP ストリーミングサービスが急激に増加している.その他にも,様々なアプリ ケーションによって,近年ネットワーク上にはトラヒックの混在が進んでおり,これらを より高品質に利用するためのQuality of Service(QoS)保証技術確立の必要性が叫ばれてい る.本研究室でも,QoS 保証を実現する一手段として,インターネットルータの出力バッ ファ部において,パケットスケジューリングとパケット廃棄制御を連携させた処理を行うこ とにより,フロー毎の固定帯域配分を実現する制御機構(QoSC : QoS Controller)の提案・ 実装が行われてきた.

しかし,現在のQoSC のBest-Effort クラスではフローに公平に帯域を配分するだけであ り,TCP ストリーミングを安定して供給するには問題が生じる.ネットワークの状況によっ ては,初期に大きく帯域を確保できず,それによって再生開始までに遅延が発生する問題 や,瞬時的な輻輳が発生した時に,全てのフローに公平に帯域を割り当てようとすること で,既存フローの送信量が急激に低下し,再生処理中に停止してしまう問題もある.

そこで,本研究では上記の課題に対し,既存QoSC のBE クラスをベースとしてTCP ス トリーミングにより高度なQoS 保証を提供可能な方式を提案する.具体的には,継続時間 カウンタをQoS 制御機構に拡張し,フロー毎の継続時間によってバッファ量(基本量) やス ケジューリングに差をつける.まず,継続時間の短い新規フローに大きな基本量を与える ことで,初期帯域を大きく確保させると同時に,既存のフローに最低限の基本量を与える ことで,送信量の維持を可能にする.そして,スケジューリングについても,新規フロー に優先的に送信サービスを割り当てる.これら提案方式により,新規フローの初期帯域を 大きく確保すること,既存フローの帯域の急激な低下を防ぐことを狙う.また,提案方式 をシミュレーションにより評価した結果,TCP ストリーミングに対する有効性を確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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