渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2008年度 卒業研究論文

配信者の転送負荷を低減させるP2P ライブストリーミングシステムに関する研究
久田 貴之

インターネットはクライアント/サーバ型のアーキテクチャであるWorld Wide Webと共に発展してきた.その中で近年のネットワークのブロードバンド化に伴い登場したライブストリーミング配信システムは,インターネットでのコンテンツ配信の形態を大きく変え,TVに代わる新しい配信システムとして注目されている.しかし大半を占めるクライアント/サーバ型の配信では,ネットワーク規模の拡大に比例してサーバ負荷が増大するという特徴があり,配信者はサーバの増設に対する多大なコストを負担する必要がある.

これらの配信者の負荷を低減する方法の一つとして,P2Pネットワークを利用したP2Pライブストリーミング配信システムがある.P2Pライブストリーミングシステムは,各ユーザのノードがピアとしてコンテンツ配信を支援することにより配信者ノードの負荷を大幅に低減するシステムである.この代表例であるCoolstreamingはメッシュ型ネットワークであり高い配信性能を誇り,広く利用されている.このようなP2Pライブストリーミング配信の利用例として,バンドのライブ配信や教育プログラムの生中継等,個人配信に対する需要が考えられる.しかし,Coolstreamingはピアの帯域幅を考慮しないネットワークを構成するため,P2Pネットワークの上り帯域を十分に利用できず,個人規模配信においては配信者ノードの負荷増大や再生品質低下を引き起こす可能性が高い.

そこで本研究では,配信者ノードから広帯域ピアにコンテンツを複製し,広帯域ピアが配信者ノードの代わりに狭帯域ピアに配信を行うようなネットワークを構成し,ピアの上り帯域幅を有効利用することにより配信者ノードの負荷低減および再生品質の維持を実現するシステムを提案する.具体的には,配信者ノードは広帯域ピアのみにコンテンツ配信を行うことにより,配信者負荷の低減を可能とし,また広帯域ピアに同時接続するピアの数を増加させることにより,広帯域ピアの上り利用帯域幅を増加させ再生品質を向上させることが可能となる.

本提案方式をシミュレーションで評価した結果,提案方式ではコンテンツビットレートの増加による再生品質の低下が軽減され,また配信者負荷が低減されることを確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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