渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2009年度 卒業研究論文

制約時間の異なるエージェントのための公平性を考慮したスケジューリング方式
森下 美希

近年,巨大化が進むネットワークにおいて情報・サービスをユーザが効率的に利用するための手段としてモバイルエージェントが注目されている. 本稿では,マルチエージェントシステムを用いた典型的なアプリケーションの一つである情報検索において,各エージェントに時間制約が与えられている環境を考える.

本研究室では,このような状況下でネットワーク上の各ノードにおいて処理を完了しても最高スコアが増加する期待が小さいエージェントや制約時間までに処理を完了できる 確率の小さいエージェントに実行を停止し,その他のエージェントや割り当てるノードのCPU 資源の増加を図ることで,各ユーザが得る検索結果の質を平均的に高め,かつ,そのユーザ間での差を抑える実行制御方式を提案している.

この時,この既存方式ではスケジューリング規律にProcessor Sharing を用いており,ユーザの課す制約時間の違いを考慮していない.しかし,実際はユーザにより許容できる制約時間は異なるものと考えられる. 例えば,高い料金を支払うユーザに対してはより短い時間で検索結果を返すようなサービスの場合,制約時間が短いユーザと長いユーザ間で得られた検索結果の質に差が生じないことが望ましい.

そこで本研究では,制約時間の異なるエージェントが混在する環境においても,ユーザの獲得するスコアの差を小さくすることを目的として,各エージェントの獲得スコアの期待値の差を小さくするスケジューリング方式を提案する. 具体的には,エージェントが検索終了時間までに獲得するスコアの期待値が近似的に等しくなるよう,獲得済みスコアと制約時間を重みとしてWeighted Processor Sharing を行う.

最後に,計算機シミュレーションによる性能評価により,本提案方式を適用することで各エージェントが取得するスコア差が平均的に小さくなることを確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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