2009年度 卒業研究論文

近年，無線通信機能を備えた多数のセンサ端末によって自律的に構成され，環境情報を長期間収集する ワイヤレスセンサネットワークが注目を集めている．ここで，センサ端末は一般的に電池で駆動するが， 多数の端末の電池交換は現実的に困難であるため，電力の枯渇による機能停止が問題となる．

そこで，長距離伝送が可能で大容量のバッテリを備えた高性能ノードを少数 導入することでデータ伝送回数を低減し，ネットワーク全体での電力消費を抑えることでネットワークの長寿命化を 図る手法が提案されている．

しかし，既存の経路制御プロトコルはノード性能の均質なネットワークを想定しており，高性能ノードを最大限に 有効利用することができない．そのため，高性能ノードを経由するルートが選択されなかったり，逆に高性能ノードが 過剰に利用されるという問題がある．

そこで本論文では，ノード性能の不均質なネットワークのための拡張DSRプロトコルを 提案する．具体的には，ノードの伝送可能距離と残余電力，確立ルート数を考慮し， 長距離伝送可能なノードを積極的に経路として選択しつつ，残余電力や確立ルート数に 偏りが出ないようにすることで，ネットワークの長寿命化を可能にする．

最後に，シミュレーションによる評価により，本方式がセンサネットワークの長寿命化を可能にすることを明らかにする．