渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2011年度 卒業研究論文

WiFi/WiMAX統合ネットワークにおける
ユーザの満足度と各事業者の利潤を考慮した動的周波数割り当て
竹本 裕明

近年,WiFi,WiMAXなどの様々な無線通信システムが発展し,無線通信を利用する機会も増加する一方で, 周波数資源の逼迫が課題となり,限られた周波数帯域の有効活用が必要となっている. そこで,現在,他のシステムの利用周波数帯域を柔軟に二次利用するために,WiFi/WiMAX統合ネットワークにおいて,WiMAXの 帯域の一部をWiFiアクセスポイント(AP)に一時的に貸すことで,ユーザのスループットを向上させるための周波数共有方式が提案されている. しかし,これまでの周波数共有方式ではWiMAX事業者,WiFi事業者それぞれが協力的であることを前提としているのに対して, 実際には事業者それぞれが利潤の向上を考えるため,一方的に帯域を貸し出すのは難しい. 一方,周波数の割り当て先の決定をオークションを用いて行う手法も提案されているが,金銭的な利益の向上を目指しておりスループットの向上について考慮されているわけではない.

そこで,本稿ではこれら既存方式の問題を解決するために,ユーザ,WiMAX,WiFiの3者が非協力的な場合においても適切な周波数共有を実現する,オークション手法を取り入れた周波数割り当て方式を提案する. 具体的には,WiFi APが帯域を借り,WiMAXに対して代金を支払う環境で,ユーザの行動を取り入れた指標として満足度を設ける.これはスループットによってAP毎に決定され,各APへの到着率はこの満足度によって変動すると仮定する. このとき,WiFiおよびWiMAXは,接続するユーザ数を増やすことが利潤向上につながるため,この満足度を上昇させるような行動を取る. 各WiFiは帯域を借りる際にいくら支払うかを接続しているユーザ数などに応じて決定し,WiMAXも自分の利潤の向上を目指して帯域をいくつ貸すかを判断する. これによりユーザはスループットの高いAPを選択することができ,WiFi,WiMAXは利潤の向上を目指した行動をとることが可能となり,3者それぞれに有益である.

最後にシミュレーションを用いて本提案方式の性能を評価した結果,3者が非協力的な場合においても周波数共有が適切に行われ,かつそれぞれにとって有益にな割り当てになっていることを確認した.

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