渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2012年度 卒業研究論文

光ネットワークにおけるマルチコアファイバのクロストークを
低減する動的周波数割当
藤井 祥平

将来の高品質なマルチメディアサービスを実現するため,基幹系ネットワークの超高速化,大容量化が求められている. 光伝送技術に関する研究が進み,光ネットワークの伝送容量は飛躍的に向上したが, 既存のシングルモード光ファイバベースの伝送容量拡大は100Tbps程度が限界であるとされており,将来的な伝送容量不足が懸念されている. この物理限界を打破する新たな革新的技術として,マルチコアファイバに対する期待が高まっている.

マルチコアファイバは極細のファイバ内に複数のコアを持つため,各コア間の距離が非常に短くなり,各コア間で信号の干渉や漏話(クロストーク)が発生する. ファイバの伝送容量を高めるためには,この干渉やクロストークを可能な限り低減する必要がある. マルチコアファイバのクロストークはその性質上,隣接するコアに同周波数の信号が伝送される場合に特に強くなる. 動的なネットワークでは,各光パスに対して周波数割当を行う際に,この点を考慮し,クロストークが発生しやすい割当を避けることで,クロストークの影響を抑えた大容量通信が可能となる.

以上のような背景の下,本研究では,マルチコアファイバを具備する光パスネットワークにおいて,ファイバのコア間に発生するクロストークを低減する動的周波数割当手法を提案する. 提案方式では,電力結合理論を用いたマルチコアファイバのクロストークの定量化に基づいてクロストークのモデル化を行い,簡単な指標に変換することで,動的なネットワーク制御における制約条件の1つとする. 実際の制御においては,周波数資源割当を周波数選択とコア選択の2つの段階に分け,それぞれの段階でモデル化されたクロストークを低減する周波数資源選択手法を提案する. 最後に,計算機シミュレーションを用いて提案方式の評価を行い,提案方式によってクロストークの発生を抑制することで,ネットワーク全体の棄却率が改善できることを確認した.

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