渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2012年度 卒業研究論文

高速動画切替可能な
P2Pライブストリーミングシステムに関する研究
近藤 大嗣

近年,インターネットを利用したP2P型のライブストリーミング配信サービスが注目を集めている. また,今後は3D映像や多視点動画など,大容量コンテンツの配信サービスも提供されると予想される. 一般的に,高いスケーラビリティ性を有するP2Pライブストリーミング配信システムにおいては,1動画につき1つのP2P型オーバレイネットワークで配信を行っている. 動画切替時には,一旦配信ネットワークから離脱し,新たな配信ネットワークへの参加手続きを行う必要がある. そのため,従来のクライアント/サーバ型に比べて,動画切替に時間がかかる. この切替時間は,自身が好む動画を探すために頻繁に動画を切り替える行為であるザッピングを行う場合,特に問題となる.

そこで本研究では,上記の問題点を解決するため,高速な動画切替を実現するP2Pライブストリーミングシステムの確立を目指す. ユーザが真に視聴したい動画への高速な動画切替を実現するためには,切替回数を削減するとともに,1回あたりの切替時間を短くする必要がある. また,多視点動画配信サービスのような互いに視点間の関連度が非常に高く,頻繁に視点切替を行う環境においては,視点切替時間の短縮は特に重要な課題である. 本研究では,アプリケーションの観点では所望の動画を少ない切替回数で提供しつつ,ネットワークの観点では1回あたりの切替時間を短縮する手法を提案する. 提案システムでは,ザッピングサーバと呼ばれるユーザの動画切替を補助するための専用のサーバを新たに導入する. このザッピングサーバは,動画切替時間の短縮を実現するため,切替時間に大きく影響する新たな配信ネットワークへの参加手続きを事前に代理として行う. また,動画のカテゴリ情報に基づいた推薦機能も有し,複数の推薦動画の低画質版を推薦動画集合として提示する. 以上の機能より,ユーザは短い切替時間かつ少ない切替回数で,真に視聴したい動画を選択することが可能となる.

本提案方式をシミュレーションにより評価した結果,ザッピングサーバを導入した提案方式では推薦機能による動画切替回数の削減効果を確認するとともに, ネットワークへの参加手続きの代行による1回あたりの動画切替時間が短縮可能であることを明らかにした.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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