2012年度 卒業研究論文

近年，ネットワークの高速・巨大化に応じて，大容量ファイルをダウンロードする機会が増えている． これに対して従来のIPネットワークでは一般的にベストエフォート型の通信を行うため， ネットワーク状況によってダウンロードに要する時間に大きな差が生じる．

本稿では， ユーザが定めた制限時間までにダウンロードを完了させ，それが不可能な要求は棄却するモデルを考える． このモデルでは棄却される要求を少なくするために，効率の良い帯域割り当てを行うことが求められる． これに対して既存の研究では， 制限時間内にダウンロードを完了できる最小の帯域を保証することで制限時間を満たすようにする． そして余った帯域はネットワーク状況に応じて動的に割り当てることで， 将来の要求を受理しやすくなり呼損率を下げることができた．

本研究では， 伝送経路も動的に変更することで呼損率をさらに低減する方式を提案する． 具体的には系内の全ての要求の経路を一括して変更する． さらに従来の経路選択方式よりも効果的な指標として， タスクの残りダウンロードサイズと利用可能帯域を考慮した経路選択を行う． ただし，帯域保証を確実にできるようにすることで， 既に受理したタスクの制限時間を満たせなくなることはないようにする． この方式により既存の動的帯域割り当て方式の効果を高めることができる．

最後に，ソフトウェアシミュレーションによる性能評価を行い，本提案方式の有効性を確認した． 加えて，経路変更の回数削減が性能に及ぼす影響も確認した．