2013年度 卒業研究論文

近年，ネットワークの高速・巨大化に応じて，大容量ファイルをダウンロードする機会が増加している が，IPネットワークでは一般的にベストエフォート型の通信を行うため，ネットワーク状況によってダウンロードが完了する時間が左右されてしまう． そこで，ユーザが定めた制限時間までにダウンロードを完了させ，それが不可能な要求は棄却するモデルが考えられている． このモデルでは棄却される要求を少なくするために，効率の良い帯域割り当てを行うことが求められる．

これに対して既存の研究では，将来のダウンロード完了を考慮して動的に帯域を割り当てることで呼損率を下げているが， ネットワークの全要求についての情報を集約した集中制御が前提であるため，大規模なネットワークでの実用化が困難である．

そこで本研究では，限られた情報のみで実行可能な分散制御による帯域割り当て方式を提案する． 具体的には，AS(Autonomous System)内リンクの空き帯域の平均と，AS間リンクの空き帯域のみを考慮して経路を選択し，他の要求に割り当てられた帯域や制限時刻，経路を参照せずに帯域割り当てを行う． さらに，各ルータが独立して，各要求が利用する余剰帯域を決定する．