1999年度 修士学位論文

近年，ネットワークのマルチメディア化，高速化に伴い，異なる通信品質を要 求する様々なトラヒックの混在が予想される．さらに Diff-Serv や MPLS な どのサービスクラス化及び高速化のための技術が提唱され，普及しつつある． そこで本研究では，フロー毎の QoS 制御機能をもつ高性能ルータの実現を目 指し，フロー管理によるクラス別品質制御方式を提案する．本提案方式では， ルータのインタフェースカードを複数ポートで共有する環境を想定し，バッ ファをポート，クラス，フローの順に階層的に管理する．具体的な目的は，ト ラヒッククラスに見合ったサービスの実現，さらに特定フローによるバッファ 占有の解消である．

本バッファ管理法では，まず各フローに対して最低限使用できるバッファ量 (以下，``基本量''と呼ぶ)を配分する．バッファの使用率が低い環境下では， 各フローはその基本量に関わらず，バッファの使用が許される．高負荷環境に 遷移しバッファが Full になった場合，基本量に達していないフローのパケッ トが到着したときには，Pushout 機構を採用する．また，本研究では基本量の 配分を，ポート，クラス，フローの順に階層的に管理する方法を提案する．基 本量配分法としては，全バッファ容量を複数ポートで配分した後，そのポート 内で帯域保証型クラスに必要なバッファ量を優先的に配分し，残りのバッファ 容量を Best-Effort 型クラスで配分する．さらにパケットサービス規律とし ては， WRR (Weighted Round Robin)を採用し，その帯域配分法に関してもク ラス優先的な配分手法を提案する．これら廃棄制御とパケットサービス規律を 連携させることにより，高度な QoS 保証の実現を目指している．

以上の提案方式を計算機シミュレーションにより評価した．その結果，帯域保 証型クラスはバッファ高負荷状態時においても帯域を保証されることが確かめ られた．さらに，特定フローによるバッファ占有問題が解消された．