2001年度 修士学位論文

近年のネットワークの巨大化に伴い，ネットワーク上で公開される情報は増加 し，多種多様になってきた．このような大規模ネットワークをユーザが効率よ く利用するための技術として，モバイルエージェントが注目されている．

筆者らの提案するマルチエージェントシステムAgent Gatewayでは，エージェ ントが活動するネットワークを論理的に構成する．すなわち，各ノード間を論 理リンクで接続し，物理ネットワークとは独立に論理ネットワークを形成する． エージェントは論理ネットワーク内を移動し，ユーザ及び他のエージェントと メッセージを交換しながら仕事を行うため，論理ネットワークの形状次第では， ネットワーク内のトラヒック量の増加やエージェントの移動遅延やメッセージ の伝達遅延の増大をまねく可能性がある．特に後者は，リアルタイム性を指向 したネットワークにおいては重大な問題である．

本稿では，ノード間を論理的に経由するノード数を論理的ホップ数とした時， 任意のノード間の論理的ホップ数を制限値以下に抑えることでリアルタイム性 を実現し，かつ物理ネットワーク上の総トラヒック量を小さくする論理ネット ワークの設計法を提案する．本方式は，構築中の論理ネットワーク上の各ノー ドから最遠ノードまでの論理的ホップ数の値と，未接続のノードまでの物理的 距離の積が最小となるノードを構築中の論理ネットワークに接続するものであ る．そして，各ノードから最遠ノードまでの論理的ホップ数が制限値を越えた 時，構築中の論理ネットワーク上にバイパスとなる論理リンクを追加すること で，任意のノード間の論理的ホップ数を制限値以下にする．

最後に，シミュレーションによる性能評価により，提案方式によって生成され た論理ネットワークが，エージェントの移動やメッセージの伝達に要する論理 的ホップ数を制限値以下にすることを確認でき，かつ総トラヒック量を削減す ることを示した．