2002年度 修士学位論文

将来の高度なマルチメディアサービスに対する情報基盤となる超高速, 大容量ネットワークが求められている．しかし従来の電子回路による交換を高速大容量化することは コスト面でも技術面でも困難であり，光の高速性・広帯域性を最大限活用する全光型ネットワークが要求される. 伝送路においては，信号光を波長分割多重することが必要である．交換ノードにおいては，多重光を各波長に分離して光レベルでスイッチし再多重する構成をとることが必要であり，双方の技術により全光の波長パスルーチング網が実現する．

光伝送可能な波長帯域は拡大されてきており容量増加は実現するが，従来から考えられている波長パスルーチング網においては，パスの増加に伴ってスイッチの大規模化が迫られる．しかし現段階では光スイッチの大規模化には限界がある．これに対し，スイッチで複数波長をグループ化し一括的な交換を行うことによりスイッチ大規模化を抑制することが可能である．そこで筆者らは，対地間トラヒックデマンドに応じた複数波長のグループ化を行う波長群ネットワークを提案している．

本研究では，さらにスイッチを小規模化するために，経路が部分的に一致する複数の波長パスをグループ化することを提案する．さらに，経路が類似するパスを波長軸上で連続させ積極的にスイッチ小規模化を目指す波長割り当てアルゴリズムを新たに提案する．トラヒック収容設計においては波長資源の効率利用が不可避であるため，互いにトレードオフの関係にある必要波長数とスイッチ規模の双方を最小化するアルゴリズムとして設計した．

最後に, 種々のネットワークに対して提案波長割り当てアルゴリズムを適用し，さまざまなスイッチの波長多重分離能力の条件下での性能を評価した．その結果，スイッチを小規模化できる波長群ネットワークの有効性を実証した．