渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

english

2003年度 修士学位論文

クローンの処理状況を考慮したエージェント実行制御方式に関する研究
細川 晃

近年,大規模かつ複雑になりつつあるネットワーク上での作業をユーザの代わりに遂行するモバイルエージェントが注目されている.特にマルチエージェントシステムでは,クローンエージェントを生成して並列的に処理を行うことで,複数のネットワークノードでの処理を効率よく遂行できる.

エージェントがユーザから指定されたすべてのノードで処理を完了することを目的とする場合,その応答時間はすべてのクローンエージェントが処理を完了するまでの時間になる.このとき,それぞれの処理対象の違いや他ユーザのエージェントとの競合の度合によって,各クローンエージェントの処理完了までに要する時間には大きな差が生じる.ここで,それぞれの処理対象を実際にそのノードに移動しないと利用できない場合,競合状況下でもそのノード内で処理を行わなければならないことに注意する.このような環境下では,エージェントの応答時間は処理が遅れているクローンエージェントに依存するため,そのようなクローンエージェントの処理を優先するエージェント実行制御が応答時間抑制のために有効である.

本稿では,各クローンエージェントの処理状況を考慮することでエージェントの応答時間の抑制を実現するエージェント実行制御方式を提案する.本方式は,残りの処理中のノード数が少ないクローンエージェントに優先的にCPU時間を割り当てることで,このようなエージェントの応答時間の抑制を実現する.一方で,特定のユーザのエージェントにCPU時間の割り当てが偏ることを防ぐために,単位時間当たりに各エージェントがネットワーク全体で割り当てられるCPU時間に上限を設定することで,エージェント間の公平性を保証する.

最後に,シミュレーションによる性能評価によって,提案方式が特に競合状況が発生しやすい環境においてエージェントの応答時間を大幅に抑制できることを確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
pagetop