渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2003年度 修士学位論文

次世代衛星航法システム受信機の信号捕捉手法
内田 翼

近年,GPS (Global Positioning System) の応用分野は船舶用や車載用のナビ ゲーション装置をはじめとして,測量用機器等の多様な方面に広がってきてい る.しかしながら,民間航空機や高度道路交通システム(ITS: Intelligent Transport Systems) 向けの測位機器への応用という観点からは,GPS 単独で は実用上の要求性能が実現できないという技術的課題を抱えている.これに対 処するためにGPS, GLONASS (GLObal NAvigation Satellite System) といった 複数のシステムに対応したGNSS (Global Navigation Satellite System) の研 究開発が数多く進められている.

現行のGNSS 受信機用の信号処理機構では, 処理回路の規模を小さく抑えるものの,柔軟性に欠く.この問題を解決し, GNSS 受信機を効率的に動作させるために,すべての衛星航法システムの信号 を受信可能とする汎用の信号処理チャネルを用いる構成が提案されている.し かしながら,この受信機がどの程度の性能を有するのかを明らかにするには, 信号処理アルゴリズムの検討および定量的な評価が不可欠である.

そこで本研 究では,汎用の信号処理チャネル構成を持つGNSS 受信機に適した信号捕捉手 法の提案を行う.状況に応じて信号処理チャネルの利用法を変更することによ り,信号捕捉時間(TSA: Time of Signal Acquisition)の短縮を目指す.

TSA の短縮を実現するために,まず,各システムの信号探索範囲の解析を行い,そ れぞれのシステムの特長を活用し,信号探索範囲を効率的に削減する衛星割り 当て手法を提案する.また,どのような状況においてもTSA を短縮するために, 衛星割り当ての切り替えアルゴリズムを導入する.信号探索手法では,複数の チャネルに同一衛星を割り当てる方法を活用し,探索時間を大幅に高速化する.

これらの手法を用いた信号捕捉処理をC 言語で記述し,信号捕捉シミュレーショ ンにより定量的な評価を行った結果,従来手法と比較して,平均TSA は約60 % 短縮し,提案手法は効率的な信号捕捉手法であることが確認できた.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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