渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2003年度 修士学位論文

生物の増殖過程に基づくフラッディング制御方式に関する研究
和田 真

近年の計算機や端末の小型化,高性能化,またはネットワークの高速化,さらに は無線通信技術の発展に伴い,情報ネットワークは非常に多様化している.その 中でも特に,動的な制御や管理を必要とする場面において,フラッディング制御 と呼ばれる制御手法が用いられることがある.具体的には,センサネットワーク やアドホックネットワークなどのトポロジ把握や,モバイルエージェントによる コンテンツ情報検索などにおいて,フラッディング制御が利用される.

フラッディング制御とは,メッセージをネットワーク内に大量に増殖させること により,必要な情報の通知・取得や,経路の確保など,目的となるジョブを達成 する制御手法である.フラッディング制御には,メッセージの地理的な並行処理 性に伴うロバスト性や取得される解の最適性といった長所がある.一方,フラッ ディング制御が完了するまでの時間の増大,網内輻輳の誘発など,メッセージの 氾濫に起因する問題がある.

そこで,本論文では,これらの問題を解決するための基本方針として,単純フラッ ディング機構にかびや細胞などの原始的生物の増殖過程形態を参考にした機構を 導入することによって,より効率的なフラッディング制御を行う方式を提案する. 本方式では,トリガメッセージと呼ぶ特別なメッセージを用いて,ネットワーク 内の様々な領域からフラッディングを開始させる.これにより,高速にメッセー ジをネットワーク全体に伝搬させることが可能になる.また,単細胞微生物の増 殖過程を参考にし,メッセージに年齢を与え,その年齢に応じた増殖を行わせ る.これにより,無駄なメッセージの増殖を抑制することが可能になる.これ らの増殖規律を組み合わせることによって,メッセージ数を抑制しながら,高速 なフラッディング制御が実現される.

本論文では,計算機シミュレーションにより,本方式は効率的なフラッディング 制御を実現できることを明らかにする.

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