渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2004年度 修士学位論文

モバイルストリーミングに適したTCP 再送制御方式に関する研究
福井 洋平

近年,移動体端末の急速な普及に伴い,移動体端末からのインターネットアクセスが急 増している.これまでの有線系通信の発展過程から考えると,今後は移動体端末向けのス トリーミングサービスが拡大していくものと考えられる.しかし,無線環境下において は有線系と異なり,端末の位置・環境や移動等により,伝搬路状態は大きく変動し,伝送 誤りが頻繁に発生することが知られている.従来のUDP を用いたストリーミング方式で は,伝送誤りの発生により映像品質に大きく影響を与えるパケットが損失し,映像品質の 低下が生じる可能性が高い.

そこで,本研究では,無線環境下においてストリーミング映像の品質改善を目指し,TCP が有する再送機能を利用した高能率ストリーミング方式を提案する.本方式は,無線基地 局に備える優先度制御機構と,移動体端末に備える再送制御機構から構成される.具体的 には,優先度制御機構においては,映像情報の重要度に基づく優先度の低いパケットの廃 棄を行なう優先度制御を行い,無線状態に適した転送レートに適応的に変化させる.また, 再送制御機構においては,迅速なストリーミング転送を行なうために損失パケットの映像 品質に与える影響度に応じてTCP の再送機能を選択的に適用する.これにより,無線伝 搬路状態が劣化した状況下でも映像品質の維持が可能である.また本方式では,トランス ポート層の下位層に再送制御機構を備えることにより,TCP プロトコル自体には変更を 加えることなく再送制御を行なうため,実装面でスケーラビリティが高い方式である. 本提案方式の有効性を,計算機シミュレーションを用いて評価した.提案方式と従来の UDP を用いたストリーミング方式,及びTCP を用いた方式について性能比較を行い,提 案方式がストリーミングに適し,映像品質の改善に有効であることを確認した.

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