渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2004年度 修士学位論文

ワイヤレス網におけるキャッシュ型アクセス方式に関する研究
久野 和英

近年の計算機の小型化,高機能化と無線通信技術の進歩に伴い,ルータ機能をもつ移動端末のみで一時的 なネットワークを形成するアドホックネットワークに関する研究への関心が高まっている.アドホックネッ トワークでは,ノードの移動によりネットワークトポロジが頻繁に変化するため,従来の研究の大半は,相 互接続しているノード間の通信性能向上を目的としたルーチングプロトコルに関するものである.しかし, 最近,データアクセスに関する研究が注目されつつある.

データアクセス効率を向上させる技術としてキャッシングがある.しかし,アドホックネットワークでは, 移動端末で使用できる資源(バッテリ,CPU,無線チャネル等) が限られているため,計算量や通信オーバ ヘッドが増大する有線ネットワークのキャッシング方式を直接適用するのは困難である.従って,アドホッ クネットワーク環境に適したキャッシング方式が必要となる.しかし,アドホックネットワークにおける従 来のキャッシュ方式は,ネットワーク内に存在するキャッシュノードを効果的に利用することが難しいため, データ配信効率が低下するという問題がある.

そこで本論文では,近年GPS 装置の小型化,低コスト,そして省電力化によって移動端末への搭載が可 能となり,これによってネットワーク内のノードの位置情報が取得可能であることに注目する.キャッシュ ノードの位置情報を用いることを前提とし,ネットワーク全体の使用帯域や消費電力量の抑制が可能なキャッ シング方式を提案する.本提案方式では,特に送信元ノードに対して複数のコンテンツ要求が集中するよう な状況下において,送信元ノードが直接データ配信を行うよりも効率が良いと判断した場合に,キャッシュ ノードに配信を代行させる.

以上の提案方式について計算機シミュレーションの利用により,データ配信時の使用帯域,送信元ノード の処理負担,中継データ処理,データ送信に要する時間について評価を行い,本提案方式の有効性を確認 する.

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