渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2004年度 修士学位論文

エージェント間通信のためのセキュアなメッセージ転送方式に関する研究
森口 昌和

近年,大規模かつ複雑になりつつあるネットワーク上での作業をユーザの代わりに遂行 するモバイルエージェント技術が注目されている.特に,マルチエージェントシステム では,クローンエージェントを生成して並列的に動作させ,協調に必要な情報を含むメッ セージを互いに交換することで,効率良く処理を行うことができる.

このエージェントシステムの運用を,不特定多数のユーザが存在するネットワークで考 えると,悪意を持ったユーザが自分の利益を増やすためにエージェントを媒介にして不 正行為を行う可能性がある.中でも,エージェント間通信を利用した不正行為には,他 のエージェントのメッセージへのなりすまし,協調情報の改ざん,メッセージの不転送が ある.

一般に,複数のエージェントを利用したアプリケーションでは,通信で得た協調情報を 総合して送信したり,隣接する複数のノードからの協調情報を集約して次の隣接ノードに 転送したりすることが多い.このように,協調情報がノードを経由する度に書き換えられ る状況では,上記で述べた不正行為を検出することは難しい.

そこで本稿では,不正行為を行ったユーザのノードを特定できる環境を構成し,不正行 為を抑制させることで,送信されたメッセージが経由ノードで変更あるいは集約される場 合でも,セキュアなメッセージ転送を実現する方式を提案する.本方式は,メッセージに 常に,2 ホップ圏内のエージェントの協調情報を署名付きで保持することで検証を可能に し,協調情報へのなりすましおよび改ざんを検出する.また,メッセージにシーケンスナ ンバーを添付し,それが連番で送られてきているかを確認することで,メッセージの不転 送の検出を可能としている.さらに,その不転送が故意に引き起こされたものかどうかを 区別するためにKeep Alive メッセージを導入している.これらにより,悪意を持ったユー ザのノードを特定することができる.

最後に,本方式の導入によって付加される処理に要する時間を測定することで,提案方 式が有効であることを確認する.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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