2005年度 修士学位論文

将来の高品質なマルチメディアサービスを実現するため，基幹系ネットワークの超高速 化，大容量化が求められている．現在のネットワークの主要構成要素である交換部は複雑 な電子回路で構成されており，高速，大容量化することは技術的に困難であるため，光の 高速性・広帯域性を最大限活用した全光型WDMネットワークが期待されている．

WDM技術における交換方式として，波長資源の有効利用やスイッチ制約の観点から， 光回線交換と光パケット交換の中間に位置する光バースト交換方式が注目されている．光 バースト交換網では，複数のパケットを集約したバーストデータの送信に先立ち，制御パ ケットを専用チャネルを用いて伝送し，パス設定を行う．しかしながら，光バースト交換 網では，同一出力リンクに同じ波長を用いて同時に出力できないため，複数のバースト同 士が衝突するという問題がある．空間領域における衝突回避手法や波長領域における衝突 回避手法などがそれぞれ提案されているが，伝送経路と割当波長には相関性があるため， 経路設計問題と波長割当問題の双方を考慮することが望ましい．

以上のような背景の下，本研究では，各出力リンクと波長の組に対してSuitability Index (SI) という新たな指標を用いた経路選択波長割当連携手法を提案している．提案方式は， 各ノードがパス設定に用いるシグナリングを基に自律分散的にSI値を更新し，ネットワー クの利用状況を反映させることで，波長のすみ分けを行い，衝突を回避する手法である． さらに，小数型SI値の他に，ノードにおける処理量を減らし，高速・低消費電力な動作 を目的とした整数型のSI値に関しても提案している．

最後に，種々のネットワークモデルに対して，提案アルゴリズムを適用した場合のバー ストロス率を定量的に評価し，本方式の有効性を示している．特に，疎なネットワークモ デルに対して，いずれの負荷領域でも低いバーストロス率を保つとともに，ホップ数の大 きなノード間のバーストロス率を最大で90以上抑えることが可能である．