渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2006年度 修士学位論文

無線マルチホップ環境において公平性及びスループットを向上させる
TCPに関する研究
山本 猛仁

近年の無線通信技術の発達と広がりに伴い,センサネットワークや災害時ネットワーク,ITS(高度道路交通システム)など, 無線を用いたネットワークインフラが注目されている. 中でも,既存のネットワークインフラを必要としない無線マルチホップネットワークに注目が集まっている. 無線マルチホップネットワークとは,各ノードが無線通信機能を有し, 端末自体が中継ノードにもなりうることで自律分散的に形成されるネットワークのことを言う.

一方,信頼性を有するデータ伝送を提供するため,現在のIPネットワークではTCP(Transmission Control Protocol) がトランスポート層プロトコルとして用いられている. しかし,本来,TCPは有線ネットワークでの利用を前提としているため,無線ネットワークに適用した場合には性能が劣化することが知られている. 無線マルチホップネットワーク側にも,TCPの性能を大きく劣化させる特徴が存在する. 無線マルチホップネットワークでは,有線ネットワークと異なり, すべてのノードが通信媒体である無線空間を共有しているため,その利用競争が発生する. そのため,無線アクセス制御が用いられるが,ノードが広範囲にわたって存在する場合には, そのようなアクセス制御を用いても隠れ端末問題が顕在化する. また,TCPはパケットロスを観測するまで送出レートを増大し続けるため, このような特徴をもつ無線マルチホップネットワークにおいては伝送遅延の増大と帯域の長時間占有という二つの問題が発生し, スループットと公平性が劣化する.

本稿では,上記の無線マルチホップネットワークにおけるTCPの性能劣化問題に対し, スループットと公平性を改善するTCP制御手法を提案する. 本提案方式では,中間ノードからのフィードバック情報やトランスポート層以外の層の情報を必要としない. また,計算機シミュレーションにより,本手法の性能改善効果を検証する.

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