2007年度 修士学位論文

近年，ブロードバンドネットワークの発展により，リアルタイム性のあるストリーム型 アプリケーションの利用が急増している．その1つとして，ビデオ会議のような多対多リ アルタイム通信が注目を浴びている．多対多リアルタイム通信では，１人のユーザが情報 を他の複数ユーザに送信する必要があり，マルチキャストによる効率的な通信が今後普及 するものと考えられる．しかしながら，多対多リアルタイム通信における問題点として， 各メンバのネットワークリソースが異なることによって，メンバ間で受信可能な動画像の 最大品質に差が生じることが挙げられる．これにより，メンバ間で適切な配信レートを決 定することが難しくなる可能性がある．

そこで本研究では，多対多リアルタイム通信において，各メンバのネットワークリソー スに応じた最大限の品質保証を実現することを目的とする．本研究では共有木型アプリ ケーションレベル階層型マルチキャストを想定し，共有木の根となるコアに階層型マルチ キャストに対する制御機構を付加することにより，各メンバのネットワークリソースに応 じた最大限の品質保証を実現する方式を提案する．本制御機構は4つのフェーズから構成 される．フェーズ1では，各メンバの可用帯域に応じた送信レートを決定する．フェーズ2では， フェーズ1の結果をもとに，各メンバが送信するレイヤ情報を決定する．フェーズ3では， 品質保証のためのフロー分割が行われる．フェーズ4では，コアの許容最大転 送容量に応じたレート制御が行われる．フェーズ1とフェーズ2は基本フェーズとなって おり，フェーズ3とフェーズ4はさらなる品質保証を目指す拡張フェーズとなっている．

最後に，シミュレーションにより本提案方式の性能を評価した．その結果，各メンバの ネットワークリソースに応じた最大限の品質保証が実現されていることを確認した．