渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2008年度 修士学位論文

無線マルチホップ網における隣接ノードの状況を考慮した自律的かつ適応的なパケットバースト転送法
持木 誠

近年,ユビキタス通信環境の実現に不可欠な基盤技術として,無線マルチホップ網が注 目されている.映像や音声通信を含む幅広い利用用途が期待され,また有線通信インフ ラが途絶した際の代替手段としても注目されているため,通信容量の増大化が望まれて いる.

無線ネットワークにおける主要なチャネルアクセス方式の1 つとして,IEEE 802.11 DCF (Distributed Coordination Function) が挙げられる.DCF では,無線ノードは,1 パケットの転送ごとに送信権獲得のためのバックオフ時間待機を行う必要があるため,送 信待ち時間の増加によりスループットが低下する.

この問題の解決手法として,IEEE 802.11e では,ノードが一度送信権を得ると,一定 期間はバックオフ時間待機を行うことなくパケットを連続送信できる,”バースト送信”が 規定されている.しかし,連続してパケット送信できるバースト期間は,隣接ノードの状 況に適応することができない.その結果,特定ノードに通信負荷が集中すると,パケット のバッファ溢れが生じることでスループットが低下する.また1 ノードの長時間にわたる 帯域占有により各ノード間のスループット公平性が損なわれてしまう恐れがある.

そこで本研究では,各通信コネクションのスループットとその公平性を向上させるバー スト転送スケジューリング方式を提案する.具体的には,まず隣接ノード間での情報交換 によって互いの状況を把握する.そして,ある一定の時間ごとに期限を設け,その期限ま でに送るパケットの目標数をノードごとに転送先ノードの負荷状況に適応して設定する. さらに,状況に合わせてバースト期間を適応的に変化させ,この目標数を効率よく達成 するように通信を行わせる.これらの制御により,ネットワークスループットの向上と各 ノード間のスループット公平性を目指す.また,計算機シミュレーションにより,本提案 方式と既存方式との比較評価を行い,本提案方式の有効性を明らかにする.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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