渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2008年度 修士学位論文

複数のオーバレイネットワークにおける残余通信時間を考慮した協調ルーチング
岡田 洋輝

近年,インターネットの普及に伴い通信トラヒック量が膨大なものとなっている.IP ネットワーク上では,主に最短経路検索アルゴリズムを用いたルーチングが行われている が,最短路が必ずしも最適な経路とは限らない.

この問題を解決する手法として,オーバレイルーチングが注目されている.オーバレイ ルーチングは,ユーザ間で構築されたオーバレイネットワーク上で,オーバレイノードを 中継することにより,通信品質の高い経路をIP ネットワークと関係なく柔軟に選択でき る.ここで,オーバレイネットワークの普及につれて,同一のIP ネットワーク上に複数 のオーバレイネットワークが構築されることが考えられる.このような環境では,異なる オーバレイネットワークの経路が一部のIP ネットワークの経路を共有する可能性がある. しかし,各オーバレイネットワークは一般に他のオーバレイネットワークの存在と共有物 理リンクの利用状況を把握しないため,共有物理リンクを効率的に利用することが困難と なり,全体のオーバレイルーチングの性能が低下する問題が生じる.

この問題を解決する手法として複数オーバレイネットワーク間の協調ルーチング方式 が提案されている.この手法では,利用可能帯域幅の測定によって物理経路を共有してい る複数のオーバレイネットワーク間のルーチングによる相互影響を評価し,影響を最小化 することで全体のスループットを向上させている.しかしながら,より共有物理リンクの 帯域利用効率を向上させるためには,利用可能帯域幅だけでなく,オーバレイトラヒック の残余通信時間を考慮する必要がある.本研究では,オーバレイトラヒックの残余通信時 間を考慮した強調ルーチング手法を提案する.新規オーバレイトラヒックの通信時間と, それが共有物理リンクを含む経路を利用した場合における,他のオーバレイトラヒックの 残余通信時間の増加分との和が最小となるような経路を選択する.

また,オーバレイネットワーク間の相互影響を測定することの実現可能性について,評 価が不十分であることから,提案方式の有効性をシミュレーションによって評価し,実機 実験において実現可能性を検証する.

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