渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2008年度 修士学位論文

光パケットスイッチにおけるLook-aheadバッファを用いたパケット転送スケジューリング手法
八尾 慎也

近年,情報ネットワークの高速化,大容量化技術としてWDMを用いた全光ネットワークに注目が集まっている.中でも光パケット交換網は既存のIP網との親和性が高く,全光ネットワークの理想的なアーキテクチャとして期待されている.一方で,光RAM実現の見通しがたっておらず,既存の電気IP網と同様の単純なバッファリングによって衝突回避を行うことが難しい点が,実用化に向けた課題となっている.この解決策として,異なる複数の長さのファイバ遅延線を組み合わせることで可変長の遅延を与えることが可能なバッファが考案されている.

これまでに,可変長遅延バッファ(Look-aheadバッファ)を用いたTwo-stageスイッチ構成が提案されている.このスイッチ構成では,スイッチ前段に設けた先読み用のファイバ遅延線に入力パケットを滞留させ,滞留中のパケットの情報をスケジューリングに用いることで,パケットロス率を改善することを可能としている.またTwo-stageスイッチはパケットをスイッチ出力側から入力側へ再入力するファイバ遅延線(Loop-backバッファ)も具備し,更なる衝突回避が可能である.しかし,既存の方式ではLook-aheadバッファを用いたスケジューリングに焦点が当てられており,Loop-backバッファについては深く考えられていなかった.

以上の背景の下,本研究では2種類のバッファを用いたパケット転送スケジューリング手法を提案する.提案方式ではLook-aheadバッファとLoop-backバッファを連携制御し,両バッファの利用効率を上げることで,パケットロス率を大きく改善させる.計算機シミュレーションを用いて提案方式を評価し,提案方式がパケットロス率を大幅に軽減可能であることを確認した.特に負荷が低い領域ではパケットロス率をほぼ0にまで減少させることが可能である.最後に,提案スケジューリング手法が実現可能な時間で実行可能であるかをハードウェア記述言語を用いた簡易実装により評価し,将来構築が期待される光パケット交換網において実現可能であることを示した.

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