渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2009年度 修士学位論文

動画像ストリーミング配信における復元優先度を考慮した適応的パケット復元方式
藤本 章宏

近年のインターネットにおける高速通信サービスの普及により, 動画配信サービスが注目を集めている. 一般的に動画像は異なる重要度を持つデータ群から構成されており, 重要度の低い一部のデータが欠けていても再生が可能であるという特徴を持つ. 一方で,重要なデータの損失は品質の低下を招く.さらに,この品質低下は一定期間 持続する.従って,動画品質の向上のためには,損失データへの対処が必要となる. 損失データを復元するためにいくつもの研究が行われてきている.その中の一つとして, 複数のストリームの情報から生成された,パリティパケットと呼ばれる冗長データを用いて データの復元を行う手が提案されている.この手法では,あるストリームで大量のパケットが 廃棄されても,他の正常に受信されたストリームのデータでパリティパケットを復号化することで データの復元を行うことができる.しかし,この手法は先に述べた動画の重要度を考慮していない ため,重要度を考慮した制御を行うことで動画品質をさらに向上させることができる.

そこで,本研究では,動画の重要度を考慮した,複数のストリームの情報を用いてパリティパケット を生成する復元方式を提案する.本提案では,各ストリームに復元優先度を与え,高い優先度 を持つデータを優先的に復元する.この復元優先度は,ストリーム内において重要度が高いほど, 大きな値が与えられる.これに加え,ロス率の高いストリームのデータを重要なデータとして扱い, 優先的な復元を行う.本提案では.パリティパケットを多く送信するほどパケットの復元確率が 向上するが,同時にネットワークの帯域を圧迫する恐れがある.一方,送信パリティパケット数が 過度に少ない場合は,十分なデータ復元が行われない.このことから,本提案では適切な送信 パリティパケット数を算出する.本提案により,ストリーム全体に渡る動画品質の向上が 期待される.

以上の提案を計算機シミュレーションにより評価している.シミュレーションの結果, 重要なデータが優先的に復元されていることが確認された.さらに,ロス率の高いストリームの データを優先的に復元することで,復元後の正常なデータの割合をストリーム間で 公平に保つことができることが確認された.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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