2009年度 修士学位論文

爆発的に増加するネットワーク上の情報を効率よくかつ柔軟に検索するため，エージェン ト技術の適用が注目されている．本稿では，マルチエージェントシステムを用いた典型的 なアプリケーションの一つである情報検索において，各エージェントには時間制約が与え られている環境を考える．筆者らも，このような状況下で，各エージェントが取得した検 索結果がスコアリング可能であるとき，制限時間まで処理を継続して新たな結果を取得し ても最高スコアを更新する可能性の低いエージェントの実行を停止させることで検索効率 を高める制御方式を提案している．

しかし，この方式は全てのユーザがただ一つの検索結果を要求すると仮定しており，現 実の検索モデルとの間に乖離がある．また，実行制御を行う際あるノードで動作している エージェントのみに注目しているが，ネットワーク上の他のノードで動作しているため， これらを考慮することでより厳密な制御が可能となる．そこで本稿では，まずユーザが任 意の個数の検索結果を求める環境において，新たな指標としてユーザが求める個数の結果 に付けられるスコアの平均を導入する．さらに，ネットワーク内の他のノードでどの程度 の最高スコアが取得可能かを予測し，その値に基づいた実行制御を行う．これにより，そ の指標の平均を向上させつつ，その変動係数を小さくするエージェント実行制御方式を提 案する．

最後に計算機シミュレーションによる性能評価により，本提案方式を適用しない場合と 比較して，ユーザに提示される結果に付けられるスコアが平均に向上し，その変動係数を 抑えられていることが確認された．