インターネットを介したコンテンツ配信の発展に伴い,様々なライブストリーミング配信サービスが登場している.ライブストリーミング配信サービスの中でもP2P 技術を用いた配信サービスは,配信者のノード負荷を低減する方法の一つとして近年注目を集めている.しかし既存のシステムは規模の大きい商用サービスを指向しており,サービス品質維持のためには依然として配信者ノードに相応の負荷がかかる. 一方で,ライブストリーミング配信サービスの登場は,コンテンツ自体にもより一層の多様化を促した.その結果,近年ではユーザのコンテンツ選択の手間が増大しており,コンテンツ選択を補助するシステムの必要性が増加している. 従来の動画配信システムでは,多数のコンテンツの中から各ユーザに合わせてコンテンツの選択を補助するため,選択に要する情報を特別な端末に集約し複雑な処理を行う必要がある. また,コンテンツの情報が時々刻々と変化するライブストリーミング配信においては,サムネイルやメタ情報などを用いた検索ではコンテンツの内容を正確に把握することは困難であり,従来のコンテンツ推薦手法はP2Pライブストリーミングには適さない.
そこで本研究では,ネットワークの帯域を有効に利用するためにノードの性能を考慮したネットワーク構成を行うP2P ライブストリーミング配信システムを提案する.これにより配信者の負荷を更に低減させるとともに,安定したライブストリーミング配信システムを実現する.続いて,ユーザ端末のコンテンツ利用履歴からユーザ同士の類似度により推薦コンテンツを選択し,コンテンツ自体を低画質で配信するコンテンツ推薦システムを提案する.本方式により推薦コンテンツによるユーザの満足度向上と共に,コンテンツ切替時における再生までの手順を簡略化する.
提案方式の性能評価を行うことで,提案方式が配信者の負荷を大幅に低減し,安定した配信を実現すること,特にノード離脱への耐性を有することを,確認した.また,推薦動画配信負荷を低く抑えたユーザ満足度の高いコンテンツ推薦システムを実現した.