渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

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2010年度 修士学位論文

複数ファイバWDMネットワークにおける物理特性劣化を考慮に入れた光パス設定法に関する研究
Nguyen Cong Thanh

将来の高品質なマルチメディアサービスを実現するため,基幹系ネットワークの超高速化,大容量化が求められている.現在のネットワークの主要構成要素である交換部は複雑な電子回路で構成されており,高速・大容量化することは技術的に困難であるため,光の高速性・広帯域性を最大限活用したWDM型全光ネットワークが期待されている.

WDMネットワークでは,様々な物理特性の影響で光信号が大きく劣化する.そのため,物理特性劣化を低減するための研究が盛んに行われている.一方で,光ネットワークのノード間には複数の光ファイバが具備されることが一般的である.物理特性劣化を考慮した場合,具備されたファイバや使用されている波長の違いによって,物理特性劣化の影響が変わる.そこで,複数ファイバWDMネットワークにおいて,適切に波長及び使用ファイバを選択することによって,物理特性劣化の影響を低減することが期待される.

このような背景の下,本論文では,ノード間に複数ファイバが具備されたWDMネットワークにおいて,代表的な物理特性劣化である四光波混合の影響を低減するための光パス設定法を提案する. 特に光パス設定法の重要な要素である波長割当とファイバ選択に焦点を当てる.まず,四光波混合の特性を考慮し,ホップ数に応じた波長リストを事前に算出しておき,そのリストを利用する波長割当方式を提案する. 次に,ファイバを評価するためのシンプルな計算式を利用し,各ファイバでの四光波混合の影響と既存のコネクションへの影響を概算し,影響の小さいファイバを選択する方式を提案する.

最後に,計算機シミュレーションを用いて提案方式の評価を行い,提案方式がネットワーク全体のブロッキング率を大きく改善することを示す.さらに,提案方式を用いることにより,すでに設定されている光パスへの四光波混合の影響も大きく低減されることを示す.特に,負荷が小さい時,既存の手法と比較して呼損率と既に設定されている光パスが四光波混合による信号劣化の限界を超える割合を90\%以上抑えることが可能である.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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