爆発的に増加するネットワーク上の情報を効率よくかつ柔軟に検索するため,エージェン ト技術の適用が注目されている.本稿では,マルチエージェントシステムを用いた典型的 なアプリケーションの一つである情報検索において,各エージェントには時間制約が与え られている環境を考える.筆者らも,このような状況下で,各エージェントが取得した検 索結果がスコアリング可能であるとき,制限時間まで処理を継続して新たな結果を取得し ても最高スコアを更新する可能性の低いエージェントの実行を停止させることで検索効 率を高める制御方式を提案している.しかし,この方式では各ユーザ間の制限時間を同一 としており,制限時間の異なるユーザが混在する環境ではユーザが最終的に取得した検索 結果のスコアに差が生じる.そこで,本稿では各エージェントが獲得するスコアの期待値 を指標として,最もスコアを更新する可能性の高いエージェントに全CPU リソースを割 り当てることで各ユーザの得られるスコアを平均的に向上させつつ制限時間の違いによっ て生まれるスコア差を小さくするスケジューリング方式を提案する.最後に計算機シミュ レーションによる性能評価により,既存実行制御方式と比較して本提案方式は,ユーザ間 のスコア差を低減させ,またスコアを平均的に向上させることを確認した.