2012年度 修士学位論文

将来の高品質なマルチメディアサービスを実現するため，基幹系ネットワークの超高 速化，大容量化が求められており，特に光の高速性・広帯域性を活用した波長分割多重型 全光ネットワークが期待されている．中でも近年研究が進められているエラスティック光 ネットワークは，伝送距離などの物理条件やコネクションの要求帯域に応じてより密に周 波数資源を多重化し利用することでファイバあたりの伝送容量を増大するものである．

エラスティック光ネットワークにおいては，従来の波長分割多重ネットワークにおける 固定的な周波数間隔よりも狭い間隔で周波数資源を利用するため，周波数軸上で隣接する 光パスの間にガードバンドとなる周波数帯域を適切に割り当てる必要がある．周波数資源 をより密に利用するためには，トラヒック集約を利用してこれらの余分な周波数資源を削 減することが考えられる．すなわち，複数のパスを集約し，一つのパスとして処理するこ とでガードバンドに必要な周波数資源及びトランスポンダを削減することが可能となる． しかし，動的なネットワーク環境においては，様々なパス設定要求がランダムに発生する ため，周波数連続性制約を考慮しながらパス集約を効率的に行うことは困難である．

以上の背景の下，本論文では，エラスティック光ネットワークにおいて，トラヒック集 約を利用した動的パス設定法を提案する．提案方式では，同一の送受信ペア間に発生する 複数のパス要求に割り当てる周波数資源を周波数軸上で連続させることでパスの集約を行 う．効率よくパス集約を行うため，ネットワークの状況に柔軟に対応可能な仮予約型資源 予約方式を新たに提案し，パス設定の際に利用する．パス集約を利用してガードバンドに 必要な周波数資源を削減することで，周波数資源の利用効率を上げることが可能である．

最後に，計算機シミュレーションを用いて提案方式を評価し，提案方式が比較方式と比 べてネットワーク全体のブロッキング率を最大で一桁程度改善可能であることを示す．更 に，提案方式を用いることにより，各ノードに具備されるトランスミッタ数を50% 程度 削減可能であることも示す．