渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2008年度 卒業研究論文

時間制約付き情報検索における中間結果を考慮したエージェント実行制御方式
成重 篤志

近年,巨大化が進むネットワークにおいて情報・サービスをユーザが効率的に利用するた めの手段としてモバイルエージェントが注目されている.本稿では,マルチエージェント システムを用いた典型的なアプリケーションの一つである情報検索において,各エージェ ントに時間制約が与えられている環境を考える.

本研究室では,このような状況下でネットワーク上の各ノードにおいて処理を完了しても 最高スコアが増加する期待が小さいエージェントや制限時間までに処理を完了できる確率 の小さいエージェントに実行を停止し,その他のエージェントや割り当てるノードのCPU 資源の増加を図ることで,各ユーザが得る検索結果の質を平均的に高め,かつ,そのユー ザ間での差を抑える実行制御方式を提案している.

この既存方式ではエージェントがノード内の全てのデータを評価した時点でのみ結果を 取得できると想定しているが,実際には全データを評価する前に制限時間などで処理を停 止した場合でも,それまでに評価が完了しているデータの中から最高スコアの結果を取得 するモデルが妥当であると考えられる.

そこで本研究ではこのモデル上で,各エージェント が制限時間までに既に取得した最高スコアをどれほど更新できるかの期待値を用いて実行 制御を行う方式を提案する.具体的には,エージェントが制限時間までに評価できるデー タ数を推定し,それを基に既に取得した最高スコアからの増加量の期待値を計算する.そ して,ノード内のその値の合計値が大きくなるように制御を行う.これにより,エージェン トが取得するスコアが平均的に向上することが見込まれる.

最後に計算機シミュレーションによる性能評価により,本提案方式を適用することで各 エージェントが取得する結果の質が平均的に高まり,その分散も抑えられることを確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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