渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2009年度 卒業研究論文

耐障害性を有する複数配信木型マルチキャスト伝送方式の研究
高橋 和也

近年,ネットワークの高速化に伴い,リアルタイムストリーミング配信のような動画配 信サービスへの需要が高まっている.これらのサービスを実現するデータ伝送方式として, アプリケーションレベルマルチキャスト方式が注目されている.その一つである複数配信 木方式は,常にデータの伝送経路が定まっているため配信の遅延やジッタを低く抑えやす く,また,各ノードをいずれかの配信木において中継ノードとすることで各ノードにかか る帯域負荷の分散を可能とする.しかしながら,ノードの故障や離脱により,配信木の再 構築まで一部のノードへのデータ配信が滞り,これらのノードにおける受信率が低下する 問題が知られている.

この問題に対して,冗長データを確率的に複製し,別経路を利用して転送することで,配 信木再構築中のデータ受信率の低下を抑制する方式が提案されている.しかしながら,こ のように確率的に処理を行うプロアクティブアプローチでは,冗長なデータがネットワー ク上を大量に流れるため,ネットワークに多大な負荷がかかる.

以上のような背景の下,本研究では問題発生の疑いを早期に判定し,孤立の疑いが生じ た場合に転送を行うことで,冗長データ量を低減し,ネットワークにかかる負荷の抑制を 図るマルチキャスト伝送方式について検討する.具体的には,上流ノードの故障や離脱に よりデータの受信が不可能であるノードにのみ,一時的な代替転送を行う.また,転送元 候補にノード間遅延の短いノードを選択することで,転送時間を短縮し,迅速な障害回復 を実現する.

本提案方式をシミュレーションで評価した結果,提案方式は既存方式と同等以上の受信 率を示しながら,メッセージ数を90%以上抑制し,転送にかかる遅延時間を半分以下に短 縮することを確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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