渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2010年度 卒業研究論文

光ネットワークにおけるパーティクルフィルタを用いた
トラヒック予測に関する研究
若林 直弘

将来の高品質なマルチメディアサービスを実現するため,基幹系ネットワークの超高速化,大容量化が求められており,光ネットワークの中でも,光の高速性・広帯域性を最大限活用し,光信号のまま交換処理を行う波長分割多重 (WDM: Wavelength Division Multiplexing) 型光ネットワークの実現が期待されている.

WDM型光ネットワークでは大容量のデータが高速で伝送されるため,トラヒックの変動幅が大きくなり,時間的及び空間的局所性が強くなる.そのため,特に大容量で保留時間の長い通信を設定するには, 現在のトラヒック状態だけではなく将来のトラヒック状態を考慮し,計画的にデータを伝送する経路を選択する手法が必要である. その経路選択手法を実現するためには,WDM型光ネットワークにおける急激なトラヒックの変動にも対応可能なトラヒック予測方式が重要となる. 既存のトラヒック予測方式として様々な方式が挙げられるが,それらの多くは,線形・ガウス型モデルに基づいた推定を行うため,時系列に急激な変化が見られる場合や, 対象となる分布に非対称性や非正規性が存在する場合には良い結果が得られない.そのため,WDM型光ネットワークにおいて計画的にネットワーク資源を利活用するためには, 急激な変化,非対称性や非正規性にも対応可能なトラヒック予測方式が必要である.

以上のような背景の下,本研究では,WDM型光ネットワークにおける経路選択に適したトラヒック予測方式を提案する.提案方式では,トラヒック予測を``短期的なトラヒック状態の推定''と``長期的なトラヒック傾向の予測'' の2つに分類し,それぞれの方式を相互活用することによってトラヒック予測を動的に行う.状態推定は非線形・非ガウス型モデルに対応可能であるパーティクルフィルタを適用し, 変動幅が激しいWDM型光ネットワークのトラヒック状態を随時推定する.一方,傾向予測では,過去のトラヒックパターンをデータベースに保存しておき,その日の条件に合うものを予測パターンとして 用いることで,時間帯別のトラヒック変動の傾向を推定する.最後に,計算機シミュレーションを用いて評価を行い,提案方式の有効性を示す.

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