渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2012年度 卒業研究論文

大規模ネットワークにおける障害検知時間の最悪値と平均値を
最小化するテストパケット送信アルゴリズム
大石 健太郎

近年のネットワークの高速・大容量化に伴い,バックボーンネットワークはより大規模に,またより複雑なものになっている.バックボーンルータで発生するハードウェア故障の多くはSNMPポーリングやトラップ等のアラームで検知されるが,一部検知されないサイレント故障がある.サイレント故障は,ユーザの申告を受けての対応となるため,故障検知が遅れる場合がある.これに対応するために,ネットワーク全体に対して定常的に疎通試験を実施して故障検知を行うアプローチがあるが,各箇所の故障頻度の差が考慮されておらず,また,障害検知に要する時間の特性が評価されていないといった問題点が存在する.

本論文では,これらの問題点を解決する故障箇所検知手法を提案する.提案手法では,疎通試験を行う経路をリスト化し,この順番でtracerouteを定常的に実行する.このとき,あらゆるタイミングでの故障発生について,障害検知時間を最小にするよう順番を決定することが望ましい.そして,特に障害検知に要する時間の特性を評価するにあたって一般的な最悪値と平均値に着目し,これらのうちいずれかを最小化するリストを考案する.最悪値を最小化するリスト(MW)については,リストに存在する経路で試験される部品を除いて,tracerouteを実行した場合に試験される箇所数が最も多い経路を逐次選択し,経路リストに追加していく.また,平均値を最小化するリスト(MA)については,各箇所の故障頻度を考慮してMWリストに経路を追加する.

シミュレーションを行った結果,最悪値についてはMWが,平均値についてはMAがより小さいことが確認でき,提案手法が有効であることが示せた.

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