渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2013年度 卒業研究論文

エラスティック光ネットワークにおける
帯域断片化を抑制する周波数割当手法
幡田 恵彦

将来の超臨場感映像配信や高品質なマルチメディアサービスを実現するためには,基幹系ネットワークの超光速・大容量化が不可欠である.ネットワークの伝送容量の不足に対して, 限られたネットワーク資源でより多くのトラヒックのための様々な多重化技術の研究が行われている.

空間分割多重技術の一つであるマルチファイバ光ネットワークでは,ファイバの数に比例して伝送容量が向上する. 更に,各リンクに同一周波数帯の周波数資源が複数あるため, 周波数割当における伝送経路上の周波数連続性制約を満たし 易くなり,周波数資源の利用率も高めることが可能である.

一方,周波数分割多重技術として周波数利用効率の高いエラスティック光ネットワークに関する研究が近年注目を集めている. エラスティック光ネットワークでは変調方式を伝送距離や要求伝送速度に応じて適応的に変化させるため,各コネクションが要求する周波数帯域幅も変化する. この要求帯域幅の差異によって周波数資源の断片化が生じ,周波数利用効率の更なる向上を妨げている.

オンデマンドで光パスを設定・開放する場合,断片化の影響はより大きくなる. 更なる伝送容量拡大のためには,断片化を抑制する必要がある.

以上の背景の下,本研究では,マルチファイバを具備するエラスティック光パスネットワークにおいて,帯域断片化を抑制する動的周波数割当手法を提案する. % 各光パスに対して動的に周波数割当を行う際に,断片化が発生しにくい割当を行うことで,大容量通信が可能となる. 提案方式では,周波数軸上に要求帯域幅ごとの優先度を備えた優先領域を設け,その優先度に基づいて周波数割当を行う. 優先領域への割当により,優先領域内での要求帯域幅の差異を解消し,断片化が抑制される. また,トラヒックの時間的・空間的偏りへの対応を可能にするため,優先領域とは別に共通領域を設け,優先領域への割当が不可能な場合に共通領域での周波数割当を行う.

最後に,計算機シミュレーションを用いて提案方式の性能評価を行い,提案方式によって断片化の発生を抑制することでネットワーク全体の棄却率が改善できることを確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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