渡辺研究室 大阪大学大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻 インテリジェントネットワーキング講座(工学部 電子情報工学科 情報通信工学科目)

2014年度 卒業研究論文

エラスティック光ネットワークにおける多様なトラヒックを収容する周波数割当手法
杉原 盛太郎

超臨場感映像配信などの将来のマルチメディアサービスを実現するためには, 基幹系ネットワークの超光速・大容量化が不可欠である. ネットワークの伝送容量の不足に対して,限られたネットワーク資源でより多くのトラヒックのための 様々な多重化技術の研究が行われている. 中でも,周波数分割多重技術として周波数利用効率の高いエラスティック光ネットワークに関する研究が注目を集めている. エラスティック光ネットワークでは伝送距離や要求伝送速度に応じて変調方式を 適応的に選択可能であり,各コネクションが要求する周波数帯域幅も異なる. この要求帯域幅の差異によって周波数軸における資源の断片化が生じ,周波数利用効率の更なる向上を妨げている.

断片化を抑制する既存の研究は,即時予約要求のみを対象としている. 一方,大容量データ伝送などのように要求到着時より一定の遅延を許容するアプリケーションの QoSを向上するために事前予約要求を扱うことも重要となる. 即時予約要求と事前予約要求が混在するネットワークでは, 事前予約要求が要求到着時よりも未来の資源を予約することにより, 後に到着する即時予約要求のための資源が限定されることで割当が困難となり,要求ごとの不公平性が問題となる.

以上の背景の下,本研究では,エラスティック光パスネットワークにおいて, 帯域断片化を抑制しつつ即時予約要求と事前予約要求の公平性を保つ動的周波数割当手法を提案する. 提案方式では,周波数軸上に要求帯域幅ごとの優先度を備えた優先領域を設け,事前予約要求が使用する帯域を限定する. 優先領域への割当により,優先領域内での要求帯域幅の差異を解消し,周波数資源の断片化が抑制される. また,事前予約要求が使用する帯域を限定することにより,即時予約要求が割当可能な帯域が増え, 公平性を満たすことが期待できる.

最後に,計算機シミュレーションを用いて提案方式の性能評価を行い, 提案方式によって断片化の発生を抑制することでネットワーク全体の棄却率を改善しつつ, トラヒックごとの不公平性を限定的に解決できることを確認した.

PDFファイル(研究室内からのみアクセス可能)
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