光ネットワークシステム技術第171委員会 (設置年月日:平成12年12月1日)
平成22年12月1日〜平成27年11月30日 (5年間)
本委員会は、日本学術振興会「光情報通信技術に関する研究開発専門委員会」(平成6年10月〜平成9年9月)で示された光情報通信社会実現に向けた新たな取組みの必要性に関する提言に基づいて、安全で安心な情報通信インフラのあり方を総合的に検討することを目的に、平成12年12月に設立された。光通信技術の発展に主導的役割を果たした我が国が、新時代の情報通信インフラ構築に向けて新たな挑戦的課題を発掘し、研究推進することによって国際貢献を図ることを目指して活動してきた。 具体的には、(1)競争力ある光ネットワークシステム技術の創生による情報通信インフラの構築、(2)人間・社会における情報通信ネットワークの高度化の影響と役割の検討、(3)安全・安心な次世代情報ネットワークインフラ整備に向けた総合デザイン手法の開発、(4)デバイス系研究者とシステム系研究者の融合連携および異分野研究者との学際的交流、(5)産学連携による研究開発面での相互啓発と協力のあり方の検討を通じて「新しい創造の場」の開発、を目標とし、2期10年にわたって活発な活動を進めてきた。
第1期では、1999年の世界科学会議の行動プランに整合する「有限な地球の持続可能な開発を目指し、安心・安全な社会を実現する情報インフラのあり方」を希求し、その根幹に超先端光ネットワークの研究をおいて、ロザリオ型スケールフリーネットワークという新概念を創造するなど、新ネットワーク思考による「21世紀に光を再発見する」という新たな理念を先導することができた。
平成17年12月からの第2期では、「光の再発見」の具体化として「光は人の環境を総合的にデザインする」を主テーマに世界最先端の光情報ネットワークシステムの研究を多面的に進め、光ネットワークの次世代高密度都市社会システムとしての新たな飛躍を引続き先導することができた。具体的には、インテリジェント光ネットワークなどのネットワークアーキテクチャ、都市論およびトラヒック理論の観点からの新ネットワーク論について議論を行い、建築系ではアルゴリズミックデザインという手法がきわめてホットなトピックであり、そのようなコンセプトがネットワーク設計の新しい在り方にも通ずるのではないかという知見を得ることができた。また、ネットワークが創発する知能や、情報コンテンツからの社会ネットワーク構造の抽出と活用など、ネットワークを情報を運ぶフレームワークとしてとらえるだけでなく、大容量光スイッチング関連技術を前提とした将来のネットワーク基盤上で、知能や総合化された知見や情報の抽出がますます重要なポイントになることを再確認した。さらに、スケールフリーネットワークをキーワードとした複雑系科学の観点からとらえるネットワークの特徴分析を行い、ネット分析エンジンや生物に学ぶネットワーク制御系など、複雑系科学が拓く可能性について新しい知見を得た。このように第2期において、これからの社会インフラとしての光情報ネットワークのあり方やそのシステムとしての総合デザイン手法についての今後の飛躍のための理念を先導することができた。そのため引続き本委員会の設置を継続することによりこれらの理念を具体的な社会システムとして研究を深め、具現化してゆくことが重要であるとの結論に達した。
第3期では、世界最先端の光情報ネットワークシステムの研究を引続き先導してゆくことを目標とする。具体的には、クラウドコンピューティングによる大規模データセンターネットワーキングおよびモバイルビデオ通信時代の本格到来に対応するエクサビット超高速超大容量光ネットワークインフラの実現のためのシステム技術および新機能光デバイス技術の新概念創出に取り組む。光ネットワークに対する期待は、情報を大量に運ぶという役割を越えて、バイオ、計測、都市建築など様々な光ネットワーク技術応用分野と融合し、光自由空間社会ともいうべき社会インフラとしての飛躍、発展、普及が期待されている。新パラダイムによる超最先端光ネットワークシステム開発の具体化とそのための産学連携創造的研究開発の新しい推進手法を試行し、大学・企業委員間で共有を図る。また、前会期から力を入れている光ネットワークシステム技術ノウハウの伝承とその出版、若手研究者の人材育成に引続き注力してゆく。
このような活動を推進してゆくことが我が国がこの分野で引続き世界の先導的役割を果たしてゆく上で重要であり、産学連携研究の場としての本委員会が極めて有効な場であるとの認識により、設置継続を申請するものである。
本委員会は、現在、大学・官公庁関係委員32名、企業関係委員14名で構成され、定例研究会の開催に加えて、国内シンポジウム、国際シンポジウムおよびタスクフォース会合等の活動を通じて、活発な研究、調査活動を行ってきた。 定例の研究会活動として年4回を原則とし、現時点までに第20回から第39回までの20回開催した。主に、委員の研究発表や国際会議の動向調査発表ならびに委員外の専門家による特別講演などを実施した。国際シンポジウムについては、前会期の米国開催に続き、EUにおいて2回開催した。公開シンポジウムとして、電子情報通信学会東京支部との共催シンポジウムならびに10周年記念シンポジウムを開催し、成果の公表を行った。研究活動のほか、本委員会中間報告書(第2次)を出版発行したほか、これまでの10年間の研究成果に基づく光ネットワークシステムの啓蒙書の出版(平成22年8月発行予定)作業を進めている。また、本委員会の対象分野は多岐にわたることから、運営委員会、タスクフォース会合を随時開催し、運営企画や活動方針について委員間での連携、協調、情報共有を行った。 本委員会は世界最先端に位置する光情報ネットワーク関連委員企業と連携して、最先端ネットワーク技術の飛躍を推進するため、安全で安心な社会情報インフラの構築をスケールフリーネットワーク工学を軸に総合科学として確立し、その実証開発を先導することを目的としている。特に「光の再発見」を「光は人の環境を総合的にデザインする」を主テーマとして推進することを基本方針とし、第2期では、現在までに様々な具体的研究テーマに対する研究会活動や調査活動に取り組んできた。 以下に、多様な課題をいくつかの側面に分類し、これまで活発に議論を行ってきた活動概要と成果を取り纏める。
a.将来に向けた最先端光関連要素技術研究の側面から
将来、その実現が情報基盤発展の鍵となる要素技術課題を取り上げ、議論を行ってきた。具体的なトピックとしては、ナノワイヤ光回路、光LSI技術などの光集積化技術、さらには、単一フォトン発生デバイスなどの最先端デバイス技術があげられる。
b. 新ネットワークの在り方に関する検討の側面から
新ネットワークの在り方について、暗中模索の部分があるとはいえ、本委員会が取り組むべき重要な課題として重点的に研究発表・検討会を行い、議論を重ねてきた。実際に、インテリジェント光ネットワークなどのネットワークアーキテクチャや、都市論やトラヒック理論の観点からの新ネットワーク論について議論を行い、建築系ではアルゴリズミックデザインという手法がきわめてホットなトピックであり、そういったコンセプトがネットワーク設計の新しい在り方にも通ずるのではないかという議論を行ってきた。また、ネットワークが創発する知能や、情報コンテンツからの社会ネットワーク構造の抽出と活用など、ネットワークを情報を運ぶフレームワークとしてとらえるだけでなく、大容量光スイッチング関連技術を前提とした将来のネットワーク基盤上で、知能や総合化された知見や情報の抽出がますます重要なポイントになることを再確認した。さらに、スケールフリーネットワークをキーワードとした複雑系科学の観点からとらえるネットワークの特徴分析から、ネット分析エンジンや生物に学ぶネットワーク制御系など、複雑系科学が拓く可能性についても議論を行った。なお、後者は、電子情報通信学会 時限研究専門委員会 「複雑系による自己成長・修復ネットワーキング」 第1回研究会との共催で議論した。
c. 最新光関連技術開発の側面から
技術開発のフェーズがさらに進んでいる課題に関するトピックは多様である。デバイス関連からシステム開発、実証実験関連まで幅広く議論を重ねてきた。具体的には、これまでにシリコンフォトニクス技術、光変調デバイスなどの素子技術、非線形光ファイバを用いた光信号処理技術、光パケットスイッチングの研究開発技術、100GE long-haul 伝送実験などのフィールドトライアル最新動向、さらには、生体光計測・光トポグラフィなどの計測系技術などがあげられる。
d. ネットワーク関連技術のトレンド把握の側面から
最先端ネットワークの飛躍のためには、現在から近未来にかけての最新技術動向を見定め、今後の健全な技術発展への指針を見出すこと、特に、光化への発展可能性を見定めることは本委員会にとって重要な使命である。そこで、実際に運用されている、あるいは実ネットワークへの適用を見据えたネットワーク関連技術について詳細な理解と今後の発展性について議論を深めてきた。具体的には、クラウドコンピューティング技術や最先端大型計算機システム技術、NGN関連技術、高速インターネット・高速TCPの動向、さらには、さまざま用途への応用が期待されるNetwork Coding技術、産業応用に重点を置いた課題として自動車の光化に関する技術、非公衆分野への光ファイバ応用技術などについて、その研究開発の現状を把握し、有効性、ならびに発展性について議論を重ねてきた。
e. 安心安全な社会インフラシステムのための問題解決の側面から
安心安全をキーワードとした社会インフラシステムを構築するためには不可避の技術的課題として、情報セキュリティについても最新動向からその重要性について議論を行ってきた。例えば、Side Channel Attacksに対する対応の必要性なども確認されている。さらに、光の特性を積極的に利用したアプローチとして光暗号処理の分野についてもその重要性を議論してきた。
f. ビジネスモデルの側面から
本委員会では、将来のネットワークの在り方に関して、技術的な側面のみならず、ビジネスモデルに関する側面からも議論を行ってきた。技術面・ビジネス面双方の有機的結合が将来の社会インフラシステムを改革する解を模索する上で不可欠である。具体的には、社会の変容とICT課題について積極的な議論を行い、現在のサービスに関するビジネスモデル検討として、Iphone, Web2.0後のビジネスモデルについての理解と検討を行ってきた。
g. 国際的最新研究動向把握の側面から
本委員会主体の研究会での議論に加えて、主要国際会議における技術的な最新動向とそのエッセンスとなる技術紹介についての報告会を行ってきた。これらの活動は委員の方への直接的な情報提供という観点からの重要なサービスである。具体的には、複雑系科学の研究動向を把握するためにInternational Conference on Complex System 2006の会議報告を行い、さらに、光デバイス、システムの最新動向把握を目的として、ECOC 2006-2009、PS 2009の研究報告を行ってきた。
本委員会では、国際会議からの動向調査にとどまらず、委員会メンバーから組織されたグループを構成し、2007年と2008年の2回にわたり欧州の主要企業やEUや産官学で構成される組織体などとの国際シンポジウムを実施し、相互の意見交換を行うとともに、欧州を中心とした最新技術や体制作りのノウハウ、プロジェクトの現状などの調査を行ってきた。さらには、第2回国際シンポジウムの成果を踏まえて、電子情報通信学会東京支部との共催として、公開シンポジウムを開催し、100名を越える参加者を得て欧州での調査のその成果を公開するとともに、その成果を踏まえた議論をさらに展開した。
(活動方針) 第3期では、引続き世界最先端の光情報ネットワークシステムの研究を先導してゆくことを目標とする。近年、情報通信トラヒックの爆発的増大はとどまることなく続き、ネットワークインフラの抜本的再構築への要求が高まっている。しかしながら、その要求は、情報を運ぶという従来の要求とは全く異なる新しいネットワークパラダイムが求められているとみなすことができ、本委員会が取り組んできたような社会インフラとしての新概念の創造による新しいネットワークインフラの再構築への要求が加速している。具体的には、クラウドコンピューティングによる大規模データセンターネットワーキングの出現であり、また、3次元テレビやスマートフォンに代表される高精細ビデオ時代の本格到来であり、ギガビット、ペタビットを超えるエクサビット光ネットワークインフラへの要求である。超先端光ネットワーク技術への挑戦による新概念システム技術および新機能光デバイス技術の創出の先導に取り組む。また、光ネットワークインフラに対する要求は、バイオ、計測、都市建築など様々な光ネットワーク技術応用分野と融合し、情報を運ぶという役割を越えて、光自由空間社会ともいうべき社会インフラとしての飛躍、発展、普及が期待されている。 新パラダイムによる超先端光ネットワークシステム開発の具体化とそのための産学連携による創造的研究開発の新しい推進手法を試行し、大学・企業委員間で共有ならびに有効活用を図る。また、前会期から力を入れている光ネットワークシステム技術ノウハウの伝承とその出版活動を継続して取り組むとともに、社会インフラとしての光ネットワークの重要性、意義、課題、研究動向等の啓蒙に努める。若手研究者の委員への参加を積極的に求め、研究会活動、技術ノウハウの伝承等を通じて人材育成に引続き注力してゆく。
(期待される成果) 産学連携研究の場としての本委員会が極めて価値ある有効な場としての共通認識が、第1期および第2期の10年の活動を通じて産学の委員間で共有できており、上記の活動方針を推進することにより、この分野でこれまで我が国が果たしてきた先導的役割を引続き世界の中で果たしてゆくことが期待できる。
「光は人の環境を総合的にデザインする」や「エクサビット光ネットワークインフラ」、 「光自由空間社会」などの新概念の創成により、これまでの要素技術を中心とした先導的地位にとどまらず、新パラダイムによる新ネットワーク研究のシステムレベルでの世界における先導的地位を確保することができるとともに、新パラダイムの創成と光ネットワークシステム技術での先導により新機能デバイスをはじめとする基盤テクノロジーのブレークスルーを先行することが期待できる。
本委員会の活動継続により、新しい形での産学協同プロジェクト研究のフレームワークと研究開発推進手法を試行でき、新しい創造的研究開発手法の仕組みの開発やアーキテクチャおよびシステム総合技術での国際貢献が可能となる。
ネットワーク技術の知の伝承や出版活動により、知識やノウハウの蓄積が可能となるだけでなく、研究開発現場での真実と成否を分けるキーポイントなどの歴史的事実のとその過程を若手研究者に伝承でき、若手研究者の人材育成に寄与できることが期待できる。
| ◎ 第二期: 平成17年12月1日〜平成22年11月30日 (5年間) |
| (平成17年12月1日〜平成19年11月30日 |
| 委員長: 上智大学理工学部教授 小関 健 |
| 平成19年12月1日〜平成22年11月30日 |
| 委員長: 大阪大学大学院情報科学研究科教授 村上 孝三) |
| 第一期: 平成12年12月1日〜平成17年11月30日 |
| (委員長: 上智大学理工学部教授 小関 健) |
本委員会は第一期5年間にわたる活動を通じて、1999年に開催された世界科学会議の行動プランに整合する「有限な地球の持続可能な開発を目指し、安心・安全な社会を実現する情報インフラのあり方」を希求してきた。その視座に超先端光ネットワーク研究をおき、新ネットワーク思考の「21世紀に光を再発見」するという新たな飛躍の理念を先導することができた。
一般的にいうならば、産学協力研究委員会が「創造的成果を現実としていかにして挙げるか」については、試行錯誤の連続であり、「競争原理・市場主義」の中で競争企業との連携作業は知的財産権の問題から悉く失敗してきたといっても過言ではない。しかし、本研究委員会ではMITで開催した国際シンポジウムにおいて、MITのフリンジにおける研究集団が、いかに見事に創造的成果を挙げるかの手法を学んだ。すなわち、システムにおける創造性は「新境界領域での一言の発想」にはじまり、一流の参加者が、フェアプレイの精神で、自分の発見を坩堝に投げ込むことを繰り返しながら討議することから確実にシステムの創造的成果が生まれるということである。現在、本委員会のタスクフォース「光は人の環境を総合的にデザインする」では、この手法で、ロザリオスケールフリーネットという新概念を創造した。これはノードの二重帰属条件と整合し、今後のネットワーク構築論の基本に発展できる可能性を有する。
本委員会第2期では、通信バブル崩壊で方向性を見失った光ネットワーク研究開発集団に新たな「光の再発見」を「光は人の環境を総合的にデザインする」を主テーマに世界最先端の光情報ネットワークシステムを先導し続けることとしたい。具体的には、第一期で確立した「光は人の環境を総合的にデザインする」を指導理念に自由な発想から次期社会システムや光デバイスへの挑戦を委員会およびシンポジウムを通じて推進する。さらにロザリオスケールフリーネットという新概念などの具現化に取り組む。これらをとおして光システムの創造的研究の推進法を例示し、21世紀に相応しい光情報システムを大学・企業委員で共有し、普及・発展させる。
第一期の5年間を振り返ると本委員会は、波長多重SDH通信方式の導入によるインターネットの爆発的発展により経済活動を含む生活様式に大変革をきたした情報通信革命の発端期に発足した。検討の基本方針として辻井重男先生を委員長とする「光情報通信技術に関する研究開発専門委員会」でまとめた方針を継承し、interdisciplinaryに研究・啓発することを実践してきた。 研究期間の前半では、会員企業が世界の波長多重SDHシステムの爆発的な需要に対して、光集積回路技術であるPLCをはじめとする世界最先端光通信装置を地上系・海底系のあらゆる領域において供給し、席巻した時期である。しかし、2002年後半からの通信バブルの崩壊により会員企業は大きな影響を受けた。
このような大きな環境の変化のなかで委員会は、2003年1月に高知でエネルギー環境問題と情報ネットワークの関連について電子情報通信学会と共催で先導的な合同シンポジウムを開催した。さらに情報通信革命の浸透による社会構造・文明の激変のなか、「光の再発見」を求めて、2003年11月にMITでシンポジウムを開催し、あわせて創造的研究の実践に関する調査と討論を行った。これをトリガとして光ネットワークシステム技術は「人の環境を総合的にデザインする」という標語のもとに、「安全で安心な社会インフラとしての光ネットワークシステムの再発見」を目標としたタスクフォースを組織し、研究・啓発を行い、発展を遂げた。さらに、2004年4月に開催した湯沢シンポジウムでは「光は人の環境を総合的にデザインする」のテーマを掲げ、末松安晴顧問にもご参加を戴き、建築・ロボット・セキュリティ・フェスタなど広範囲な課題について光ネットワークの存在・展開可能性を議論した。また、2004年8月の札幌シンポジウムでは、システム駆動力の観点から「新デバイス・素材」の将来展望についてシリコンフォトニクスを含めて討論し、今後の動向を整理した。これらのシンポジウムを通して「光の再発見」というキーワードを確立し、貪欲に光の新展開を探求・開発する意欲を与えた。
そのひとつの形態として、新しいOptical Switched Access Networkを提案し、安心・安全社会を実現するシステムの挑戦を試みている。また、別の形態として、有志による新サロン(タスクフォース)を2004年8月から9回、試行している。ここでは、複雑系研究手法を適用して、通信システム、光伝送、建築など、多分野のメンバーが参加し、次世代ネットワークのアーキテクチャ論を複雑適応システムとして再評価するとともに、power lawに従うスケールフリーネットワークの特長を活用する効率的経路設定や安全性設計などに新手法を研究開発している。これはひとつの発想「共通の言葉としてのアーキテクチャ」(通信・コンピュータ・建築)から、坩堝に各自の発想・発見を投げ込み、討議するところから始まることを実証している。本研究はデジタルで都市発展を創造する大きな研究テーマとして結実しつつある。
以上のように、世界最先端を走る委員企業と連携して、21世紀新ネットワーク思考のあり方を先取りして研究開発する第171委員会の先導性が確立され、今後、本格的な成果が期待できる段階にきている。
本委員会は世界最先端に位置する光情報ネットワーク関連委員企業と連携して、最先端ネットワーク技術の飛躍を推進する。また、安全で安心な社会情報インフラの構築をスケールフリーネットワーク工学を軸に総合科学として確立し、その実証開発を先導する。特に「光の再発見」を「光は人の環境を総合的にデザインする」をテーマとして推進する現在の委員会内タスクフォースを持続発展させる。
このため体制を強化すべく、大阪大学滝根哲哉(ネットワーク論)、建築・都市工学から東京大学浅見泰司教授(空間情報科学)など新たなメンバーに参加を戴く。また、光ネットワーク技術の最先端を上述のように広範囲に捉えるため、海外大学、企業などの研究機関との連携を一層、深める必要があり、第一期では抑制気味の海外からの委員会討論などへの招聘を積極的に行う。
また、高密度情報都市空間のインフラ総合研究において、FMC(Fixed Mobile Covergence)など移動系と光ネットワークの連携、電話、インターネット、映像(放送)のTriple Play あるいはさらにモバイルサービスも包含するQuadruple service はノマド化する社会に不可欠な要素であり積極的取り組みを設定している。この推進には(株)トヨタIT開発センタの斉藤忠夫専務取締役(東大名誉教授)などの参加を戴く。
今日の情報通信革命の基本的トリガとなった光通信技術の創生には日本が主導的な役割を にない、日本企業は世界の光通信インフラストラクチャの構築に大きな貢献を続けている。また日 本が考案した共同研究手法は米国、EUなどでの雛型になっている。しかし、近頃、国際会議でも、 わが国の本質的ブレークスルーへの研究は少ないとの嘆きがささやかれている。この光通信技術 の研究開発の踊り場的状況を打破するトリガとなる光ネットワークシステム技術研究委員会の設置 を提案する。
現在、電話中心のネットワークからインターネットによるマルチメディアネットワークへの大 変革をもたらしつつあり、そのネットワークを波長多重によるテラビットフォトニック技術が担おうと している。この大きな変革は、「ネットワークなしには生活ができない」という真の社会基盤として社 会経済の変貌をとげる歴史的イベントである。従って、この技術は先端的技術としてのみならず、 世界的な情報化社会の構築において主導権をにぎる観点からも重要であり、欧米諸国から激しく 追上げを受けている。日本学術振興会産学協力研究委員会においても、「光エレクトロニクス第1 30委員会」が広範囲な光応用技術の総合的研究を強調し、推進している。これをさらに先端ネット ワーク技術に特化し発展させるため、今日のIPインパクトによるネットワーク革命を推進する観点 から、本質的なシステムニーズをデバイスシーズと結合してブレークスルーを図る創造的研究委 員会を試行する。その基本は21世紀に光ネットワークシステムが飛躍するのに必要な挑戦課題を システム、デバイスの総点検分析から抽出し、タスクフォースでブレークスルー戦略を立案して、 ふさわしい様態の共同研究の実現を目差す。
この試みを通し、「ニーズは強いが大きなブレークスルーを必要とする研究」を大学や公的研究 機関が主として担うための日本らしい仕組みの創生と次世代の産業界、大学等を背負う若手研究 者の育成をはかる。
21世紀の情報革命を担う光ネットワークシステムの研究から、基本的ブレークスルーに必要な システム・デバイス技術を総点検して、挑戦的研究項目を抽出する。さらに、飛躍の基盤のひとつ である計測技術をも包含する。
総合委員会とタスクフォースの階層構造で運営する。総合委員会ではニーズ・シーズに関する情 報を収集・交換して、施策の総合的な討議を行う。「この指とまれ方式」で組織するタスクフォース (TF)ではニーズ・シーズの分析や具体的研究アプローチを検討し、共同研究企画を総合委員会へ 報告する。
創造的TF活動は光スイッチング領域の研究で経験した挑戦的試みであり、これを生かして運営 し、若手研究者の育成に重点的に取り組む。
| 代表 | 小関 健 | 上智大学 理工学部教授 |
| 秋葉重幸 | (株)KDD研究所 所長 | |
| 浅井孝弘 | (株)日立電線 研究開発本部次長 | |
| 伊賀健一 | 東京工業大学大学院精密工学研究所 教授 | |
| 稲田浩一 | (株)フジクラ 専務取締役 | |
| 大久保勝彦 | (株)古河電工 常務取締役 | |
| 河西宏之 | 東京工科大学 工学部 教授 | |
| 笠見昭信 | (株)東芝 副社長 | |
| 菊池和朗 | 東京大学先端科学研究所教授 | |
| 小林功郎 | (株)日本電気 支配人 | |
| 末松安晴 | 高知工科大学 学長 | |
| 持田侑宏 | (株)富士通研究所 常務取締役 | |
| 高橋富士信 | 郵政省通信総合研究所 総合研究官 | |
| 田中英彦 | 東京大学大学院 教授 | |
| 辻井重男 | 中央大学理工学部 教授 | |
| 寺田浩詔 | 高知工科大学 教授 | |
| 中村道治 | (株)日立製作所 研究開発本部次長 | |
| 仁木尚治 | (株)アドバンテスト 常務取締役、研究所長 | |
| 西原 浩 | 大阪大学大学院工学系研究科 教授 | |
| 東倉洋一 | (株)NTT 先端技術総合研究所長 | |
| 村上孝三 | 大阪大学大学院工学系研究科 教授 | |
| 矢嶋弘義 | 通産省工業技術院電子技術総合研究所部長 | |
| (順不同) |
光通信技術は、我が国がその創生期から世界をリードし、実用化に当たっても主導的役割を 果たしてきた世界に誇りうるものである。しかし、この技術は先端的技術としてのみならず、世界的 な情報化社会の構築において主導権をにぎる観点からも重要であることから、欧米から激しく追上 げを受けている。
日本学術振興会は辻井重男教授を委員長に末松安晴学長の参加を戴き「光通信情報技術に 関する研究開発専門委員会」(平成6年10月-平成9年9月)で光情報システム社会実現の推進に 向けて新たな取り組みの必要性などを提言した。これに基づき情報通信社会のグローバル化に向 けて「電子社会システム研究会」を発足させると共に、未来開拓研究プロジェクトとして「ホロニック 光情報ネットワーク」を組織した。また、研究推進のひとつとして、電子情報通信学会第2種専門研 究委員会「量子情報技術」を発足させている。
この委員会の後に生じたインターネットの急激な普及による情報通信革命の中で、更なる光ネ ットワーク技術の飛躍が世界的に求められており、わが国においても、先導的研究を強力に推進 する必要がある。
このような背景のもとに、「光ネットワークシステム技術研究委員会」を設置し、産学官の協力の もとに世界に誇りうる光ネットワークを実現するための「ブレークスルー研究開発」に挑戦すること とした。 本委員会は、光ネットワークに関する世界的緊急課題である以下の2項目に重点化し研究を行う。
以下詳細に説明する。
1990年代後半に入ってからのインターネットや携帯電話の爆発的な普及は、それまでのネットワ ークの構成概念を打破するだけではなく、社会や経済に対して大変革を与えはじめ、まさに情報通 信革命の様相を呈している。
また、地球温暖化や核拡散の防止といった人類、地球の持続的発展(Sustainable Development)に対する科学・技術への期待は、これまでないほどに高まり、スーパコンピュータ の開発や超高速ネットワークの実現がその成否をにぎるものと認識されている。
このような背景から、グローバル化が進む情報通信ネットワークにあっては、その核となる光通 信ネットワークの構成概念を再構築し、経済的で高信頼な地球インフラストラクチャとして光ネット ワークを展開することが必須となっている。
また、産業界でも、今はパソコンが産業の牽引力となっているが、21世紀に入るとネットワーク に牽引力が移行すると予測されている。
このようなネットワークを実現するためには、現在40Gb/sと言われている電気的信号処理の
限界打破、波長多重数の飛躍的拡大、ペタビット級IPデータの処理などに新たなブレークスルー
を必要としており、我が国が研究開発において指導的役割を果たすべき緊急かつ最重要分野であ
る。
敢えて、委員会初期の挑戦課題の一つをあげれば以下の通りである。
WDMネットワークの技術的ボトルネックは光領域でエラーフリーを保証する技術である。これは、 IPパケットのノードカットスルーを可能とする技術であり、経済化の鍵である。テラビット級超高速 光データの小規模な光論理処理が突破口の一つとも考えられる。 この目的には、ワイドバンドギャップ複合量子デバイス、フォトニック結晶、新有機材料などにより、 新しい光ネットワークシステム技術を開くことが必要である。
アインシュタイン・ボーア論争が1982年のアスペの実験で一応の決着を見て、量子力学の正し さが確認された。多くの量子干渉実験で、従来の約束事が否定される新世界の存在が示された。 暗号の根底をなす素因数分解を多項式時間で処理可能な量子アルゴリズムの提案や、量子状態 の転送など、不可能を可能とする提案、基礎実験で、現在も興奮に包まれている。
光ネットワークからみれば、「絡み合った光子のスワッピング」は光交換の基本に見える。まだ物理 の世界だから、工学的には着手は早いとの見方は、ネットワーク化による研究開発期間の急激な 短縮傾向を見るとき、不適切と考える。現代は多様化、マルチフェーズの時代で、未開拓な理学領 域を工学的感覚で鋭く探索して、工学的に有効な手立てを施し、新世界を開く時代である。これに 同意するように、IBMの量子コンピュータ研究推進者のベネットは「量子コンピュータは工学の問 題」と極言している。
そんな考えで、低雑音量子光増幅器(利得20dB以上、NF3dB以下を確認)や「絡み合った光子」 の応用を手がかりに、量子情報ネットワーク、量子計測など量子光学技術を探索する。さらに、必 要な量子光デバイス技術研究開発や量子光学情報システム実験を推進する。
このように、新世界を聞くために、物理、工学のマルチフェーズプロジェクトを実現する。